もやし

正欲のもやしのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
5.0
ようやく見れた! 明日から新作ラッシュだからほんと滑り込みだな。

この映画はあんまり思考を深めると頭がおかしくなりそうなので直感的に。


これ言ったらドン引きされるかもしれんけど、俺は稲垣吾郎パートが格段に大好きだった。
吾郎さんは検事やってて、常に真っ当なことしか言わない人。学校に行くのが辛いという息子が不登校小学生インフルエンサーの動画を参考に学校なんか行かなくてもどうたらこうたらと伝えると、いいか、こんなのはただの詐欺師だ。俺は沢山そういう奴を見てきたからわかる。こいつがこれでいくら稼いでるか知ってるか? みたいなことを言っててかなり辛辣だなと…笑

正直言ってることがいちいち面白くてずっとニヤニヤしながら見てしまった… 我ながら趣味が悪い。これだけ鈍感な人間も今や貴重だよなあ。

この映画においては絶対に笑っちゃいけないシーンなんだけど、新聞記事で「蛇口を片っ端から破裂させていた男を逮捕した。男は水がいっぱい出るのが嬉しかったと供述していた。」と読んだ直後の吾郎さんの「馬鹿なの?」は正直一番笑ってしまった…


冒頭からずっと登場人物達のあらゆることがくだらなく見えるフィルターのまま物語が進んでいたときはかなり見入っていたけど、あくまで私の個人的な意見なので気分を害さないでくれるとありがたいのですが、いざガッキーと磯村勇斗と関係性が復活したときの二人の会話にはかなり失望した。なんか価値観が私の10代後半20代前半に極めて近くて、嫌な記憶が沢山頭を過ってしまった。終始詩的で自己陶酔的に聞こえて(当人達は本気なのはわかってるんだけどそれでも)、ちょっと聞いてて鼻白んでしまった。
この人達こんな繊細な精神でよく一般社会で生きていけてるなと思いました。俺なんて高校生で社会からドロップアウトしましたよ…


大学生パートは本当に繊細で心打たれました。
「あなたが幸せならそれで良かった。」と泣きながら去っていく女子に「〇〇さん。ありがとう。」の、何だろう、本当に根本から生まれたやり取りに感動してしまった。


今は多様性を広めることに全力な世の中ですが、この映画はそのもう一歩先を小説、映画という極めて局所的な媒体ではあるけど全力で描こうとしているように思いました。
多様性の強制はもはやそれは多様性ではないのではないか。
自分がマイノリティだと感じてる人もいわゆる普通の人をないがしろにするのは違うのではないか。普通なんてものは実は存在しないのではないか。全てのパートにおいて、登場人物達がマイノリティから普通というものに、普通からマイノリティというものに、初めて触れることでハッとする。そんなシーンにこちらもハッとする。(私的な表現で言うとあまりの鮮烈さに驚いてギョッとした。)
もやし

もやし