satomi

正欲のsatomiのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

よかった。
すごくよかった。
あの…「よかった」っていう表現が正しく伝わらない可能性の方が高いんだけど。
主観として、本当によかった。
お金払ってこの作品を観れて、この時代に観れてよかった。
今年1番「観れてよかった」って気持ちになった…。

絶望の中の希望の映画だった。

これを、こんなに、丁寧に、映画にしてくれたこと、細部にまで気が届いていることに感謝と尊敬。


この「なにか」について、私はここ数年、十数年想い考え続けているのかもしれない。


わかりあえないことからしか始まらないけど、
少しでもわかりあえたら、もう孤独には戻れない。
「1人でいい」と受け入れたはずなのに、あたたかさを知ってしまったら、失いたくない、「居なくならないで」と願ってしまう。

なにかにおいても、「マイノリティ」だと自認していることが多いけれど
どこかで「理解する側」に無意識で立ってしまっている…いや、立とうとしているかもしれない。

「みんな」とか「世の中」とか「普通」とか、そんな言葉を振りかざせば自分は「大丈夫なんだ」と安心できる…のかな。
けど、似ていることはあっても同じことなんてひとつもないんじゃないかな。


ものすごく共感した言葉(歌詞)がある。
「言い切れることはない
言い切れたことは自分に言い聞かせてること」
もう、これしか浮かばなかった。
だれかに何かを強要すること、変わるよう望むことはできても、強いることはできないと思ってます。

違うことを見つけられることは、同じことを見つけることと、同じくらい嬉しい。



俳優陣もすばらしかったーーー……
最後のシーンでの寺井(稲垣)の「ちなみにご参考までに何を伝えようと?」的なセリフ(うろ覚え)、検察としてではなく寺井個人の質問になった時、発話の前に小さく「ん」って入っていたり。

バドミントンを見守るシーンで、母親たちの共感の話に、寺井(稲垣)が軽く立ちながら(高みの見物かのように)「わかるわかる」というセリフ。ちゃんとウザかった〜!

同じ商業施設の何かと話しかけてくる徳永えりさんも、奥歯をギリギリさせてくる「あぁ、この人とは一生わかり合ったり、歩み寄り合うことはないんだな」と諦めさせてくる、悪意のない悪意にしっかりHP削られた。(褒)

前半の桐生の表情は、自分の中にある「過去の佐々木」に対して執着に近い感情を持っていて、憎悪に片足突っ込んでいるような危うさを放っていたけれど、佐々木と直接話せたホテルのシーンから、桐生がようやく息ができたような顔つきをしていたこと。
あのホテルでのシーン
佐々木「ん…え、?じゃあ窓ガラス…」
桐生「ごめんなさい🙇‍♀️」
の土下座のテンション、声色がすごくよかった。自然で。自然というか、息を吸えている人間の自然な身体で。
そこからは、生きていくために必要な何かを少しだけ得たような。そして段々と得ていく桐生、そして共に居る佐々木。とてもよかった。

あと、山田真歩、やっぱり好き。(割愛)

大学生の神部八重子役の東野さん。
上手すぎてっていうのもおこがましいんだけど、本当に「あぁ、私が実際同じ大学に八重子ちゃんがいたら仲良くはなれないかも」って思わせるほど、髪の先から、瞬きから、ホットドックを拾う指先まで素晴らしかったな。

そして最後のエンディング曲も素晴らしかった。
差し込み方、歌い方の息遣い、歌詞。
この歌い方や歌声、誰だ??!って脳内Shazamしたけど全然引っ掛からなくて。エンドロールでVaundyって出てきた時に「ありがとーーー!」って泣きました。実際涙出た。

書きたいことや書けることは止めどなく出てくるけど、
今年一番観てよかった映画です。
原作も買いました。
satomi

satomi