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正欲のsii6orのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「生きるために必要だった道のりを、あり得ないって簡単に片付けられたことありますか?」に共感して視聴。映画が予習、その後に読んだ原作が本番という感じだった。

自分には自分のことしかわからず、この世界には認識出来ないことがたくさんある(理解されることを望まない人もいる)と理解した上でどう生きていくか?という倫理の授業のような映画。


以下長文メモ。

結婚式、ミスコン、lgbtフェスなどについて大人になると一般的すぎて特別な感情を抱かなくなるが、昔はもっと懐疑的だったなと思った。恋愛リアリティー番組が持て囃されること、クリスマスに人といなきゃ非リアという流れ、彼氏はいないの?みたいな質問、そういう私生活で抱く違和感に対して(私はこの物語で言われるマジョリティ側なので)自分に正直に生きるのもありだなと思った。あってはならない感情なんてない、という言葉はしみじみと響いた。

マイノリティのマジョリティに対するマイノリティのマイノリティにとっては、多様性とか正直に生きるなんて言葉は虚しいだけで、歩み寄ろうみたいな態度で解決する問題ではなく、どうせ理解できないことにはお前ら目を背けるんだろ、という視線が新鮮だった。(しかしマイノリティ側が不幸で相手を黙らそうとするのも違うよね)

多くの人には理解し難い性癖と、社会のバグという強い言葉を使う検察官のコントラストが強く、理解のされなさでは流浪の月と似ているところがあった。

孤独だった2人が、小手先の「理解してあげる」という一方的かつ傲慢な場所に落ち着くのではなく、存在を両方向から認め合えて、居なくならないよと言える関係性になれたのが羨ましく感じた。
また、孤独と共に生きてきた時間が大きい人ほど抱きしめられたい願望や人の物理的な重みは鋭利で、そういう時にできた関係は市場にありふれた恋愛と比べると唯一無二になるよなと思った。

Vaundyの呼吸のようには映画を見る前からたくさん聞いていたが、エンドロールで聞いたらもっと良かった。

こういうのが積み重なることで世界の生きやすい領域がほんの少しずつ拡大していくのだろうな。
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