Yuri

正欲のYuriのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.7
ラストの対話にガツーンとヤラれて鼻がツンとなった。「性」という永遠のテーマを朝井リョウはこう描いたのか(原作未読)。性は面倒くさい。本当は性を介したくなくても、介することがメジャーだから、相手が求めているから、簡単だからと妥協して流されることがある。本当はそれ無しで同じ速度で繋がれたらと願っているのに難易度の高さに諦めてしまう。セックスの真似事をしてもセックスはしなくても良くて、セックス以外で心から繋がれる相手と居られたら。私も「いなくならないで」と胸が苦しくなるほど渇望するだろう。
性癖について。
満たされるものが人と違うということは、こんなにも孤独で追い詰められるものなのだと突き付けられた気がした。例えば、過去にそのことで「気持ち悪い」「おかしい」と言われたことがある場合や満たされるものが犯罪に抵触するものだった場合、彼らの欲は一生満たされることはないかも知れない。そんな彼らはどう生きればいいのだろうかと考えたことがある。自分という生き物が理解されない、受け入れられない、見てもらえない悲しさ、孤独、それは死にたいと思うほど強く絶望に近い感情なのではないだろうか。劇中で「あっちゃいけない感情なんてこの世にはないから」と言っていたけど、本当にそうかな?感情はそうかも知れないけど、感情と繋がっている言動は?出したらアウトになる欲を持っている人たちはたくさんいる。「この世界に明日生きていたくない人のもの、死んでもいいと思う人のものってない」という台詞に成程と思った。あれば、今日だけ明日だけ生きてみようと思えるんじゃないかな。終わりのない絶望ほど耐えがたいものはないから。色々、普段、自分が考えていることがまんま描かれている作品で共鳴しました。朝井リョウでここまで余韻が抜けなくなると思わなかった(失礼)。第36回東京国際映画祭観客賞を信用して観て良かった秀作です。
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