Yuri

市子のYuriのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

無戸籍児、ヤングケアラー、性的虐待・・・子どもが抱えたくない問題全部乗せ状態の市子。すべては親のせいで本人には何の責任もない苦渋の人生なのだが、殺人だけは別。しかも一度ではないので仕方なかったとも言えなくなっている。どんな困難を前にしても決して諦めず「普通の幸せ」を求め続け“普通モンスター”と化してしまった市子を、杉咲花が殺人者の狂気さを感じさせない無垢な演技で表現していることで、逆に凄まじい狂気と底知れぬ市子の顔を感じさせられて恐ろしかった。冬子役で推しの石川瑠華が出ていたけど、彼女が市子を演じたら、きっととんでもなく自己中で男性を利己的に利用する女性に映っただろう。義父(渡辺大知)が言っていたように、嘘は嘘を重ねていくことでしか隠せないし、ひとつめの嘘よりふたつめの嘘の方がより大きな嘘が必要になってくる。そして最後にはこれまでの嘘を隠せるだけの大きな嘘を用意出来なくなる。それを見ないようにしてきた市子だが、今後、誰かの愛で変わることは出来るのだろうか?と切なくなった。ところで「閉鎖病棟」で笑福亭鶴瓶が死刑失敗で戸籍が亡くなったため、無罪放免にされていたが、無戸籍の人が犯罪を犯した場合はどうなるのか?と調べてみたところ、どうやら警察周辺の人々が犯人に戸籍を習得させた後、法で裁くこともあるらしい。逮捕されれば戸籍が取得出来て本人として生きていける。何とも皮肉な話だ。まさに破滅へ向かう途中の市子を観させられたわけだが、どうか誰でもいいから、市子の人生を軌道修正させ、彼女を救ってあげてほしいと願った。作品の構成自体は、市子と関わった人々の証言でチャプターが構成されていく仕様だが、その人々の数が多すぎて、全体が間延びし、勢いに欠ける作品となってしまっていた。削れる人物は削っていくなりすれば加速をかけられていたかも知れないので残念に感じた。
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