【詳述は『幾多の北』欄で】不気味で崩壊へも、大胆で飛躍へも、の色を限った独自筆致描線は、兵役の現役と·その朧ろな偏り記憶の死出の旅前の病床老人らの、本意でもない、偶然併走·対称を巾持たせて、描く。

【夜空から耳へ、開かれる傷口】

IFF2022『東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション2』上映にて。

エッセイのように語る先で、癒えない致命傷を突きつける10分間のアニメーション。

老いて自己さえ曖昧になった男たちが、二度と思い出したくなかったもの。彼らを見て、歴史の生傷を思い知る青年。

シュルレアリスムな導入部。『頭山』になってしまった『童夢』のチョウさんが、たくさん出てきたのかと思った。が、彼らは機械的な日常に取り込まれ、『頭山』が見えない青年に、風景の如く観察されることになる。それが、ある夜…。

この夜の事件が、本作のすべてですね。描かれる反応がそのまま衝撃で、心に刻まれるが、その衝撃の起源を手繰ると、さらに歴史の皮肉に唸ってしまう。

今では平和の象徴とも言える、あの“音”を出す素材はそもそも大昔に、男たちを苦しめているコトを遂行するため、発明されたモノだったわけですね。

平和になったからこそ、男たちはあの巡り合わせで、思い出すことになってしまった。

短編ながら、そういう歴史まで踏まえて作られたなら、本作は、ムダに時喰う長編などよりピリリと効いて、ずっと価値があると思います。

但し、アニメーションで描いた効果が、どこまで発揮されたのかは少し疑問。実写よりはアニメに向いているな…くらいの後味で終わりました。

<2022.9.20記>

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