竹

ウィッシュの竹のネタバレレビュー・内容・結末

ウィッシュ(2023年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

吹き替えで鑑賞。以下気になった点。

・18歳で国民が願いを王に預け、一ヶ月に一人のペースで願いが叶えられる。ってことは全員の願いが叶うことはない、切り捨てられてる願いがあることは国民全員分かってたのでは?真実を掲げ~!って今更…?

・友達が願いを捧げて無気力化したのは放置してるのに、家族の願いが危機だと知った途端に動き出すのは利己的なヒロイン。家族の願いを盗んだ時も、サイモンの願いには見向きもしない。ディズニーヒロインなんだから、同機は大義のためであってほしかった。

・喋らない方が可愛かったバレンティノ。ディズニーの「喋る動物」がやりたかっただけで、しょーもないギャグで尺を取るだけで特に喋る意味はない。まぁ子供には楽しいのか…?

・オマージュやりたさに7人に増えた結果モブ化してしまった友達たち。キャラ増やしすぎ&オマージュギャグに時間割きすぎでキャラの掘り下げは全員無く、愛着もわかない、というか覚えられないレベル。ミラベルみたいに主要キャラが多くても成立している作品はあるのにこっちは酷い。

・みんな幸せに暮らしてる国のはずなのに、その国の構造をぶっ壊すアーシャに反対する人が出てこない。
ダリアが「私の願いは『杖なしで歩けるようになりたい』なの!自分じゃ叶えられないのよ!余計なことしないで!」なんて言い出しても面白そうなものなのに。ダリアがお城で使用人をしてるのはマグニフィコに取り入って願い叶える「裏技」狙いだろうに、そういう「裏技」の存在を知りながら、親友の願い(それも自分の努力ではどうにもならない願い)より家族の願いを大事にするアーシャが利己的すぎて怖い。

・王様クッキーをドンドン踏みつけて壊す描写は気分が悪かった。食べ物を、それも人の顔を模したものを踏むなんて子供には見せたくない。

・長年連れ添った夫が暴走したら葛藤もなく秒で裏切る王妃。妻として説得しようとかもなく、いきなり反乱分子の味方をして、夫を閉じ込めて自分が国のトップになりめでたし。この人が一番感情ないサイコで怖い。
原案はヴィラン夫婦だったらしいし、途中から王妃を良い人に作り変えたせいで整合性が取れずにやばい人になってしまったのかな。何ならアマヤがアーシャを利用して王座を奪った真のヴィランとかの方が見たかった。

・なんか雑に解決するクライマックス。国民は何を思って歌ってたの?あの時点じゃ国民の願いは「なんか分からんけど解放してほしい」くらいのものでは。国民の精神がアーシャに乗っ取られていて怖い。

・願いは自分で叶えるもの!って歌ってるけど、マグニフィコに共感してワンチャン狙ってロサス来て願い捧げたのは自分なのに急に何を言い出すのか。国の運営方針が気に食わないからって、最強の兵器スターを使って暴力で解決するの本当に良くない。

・マグニフィコは根っからの悪ではなかったのだから、改心の余地を与えても良かったのでは。勝利にキャッキャしながら容赦なく罰す感じが怖い。

・シバの願いは危険じゃないと豪語しておきながら、結果的に歌のパワーで国家転覆させるクーデター集団となってしまったアーシャ達。マグニフィコの政治は正しかったんだなとしか思えなかった。

・終盤の急なフェアリーゴッドマザー推し。アーシャの願いは実は「魔法使いになりたい」だった…?特に語られないので謎。
そうだとしたら、ラストは「願いは自分の力で叶えなきゃね」ってスターに杖を返すくらいはしてほしかった。努力で魔法使いになったヴィランに心で負けてる。


映像は挑戦的だった(良いとは思わなかったけど)し、アーシャのビジュは可愛くて好き。曲もミュージカルとしてはテンポが悪く駄作レベルだけど、曲単体で聴くとラップ調のものがあったりと斬新で嫌いじゃない。まあ普通にミュージカル専門の人に曲作って欲しかったけど。
ただストーリーは「スターという強力な武器をに入れた国民がクーデターを成功させる」以外の何者でもなく、主人公の成長物語などを期待していると裏切られる。

ラプンツェル以降の近年のディズニープリンセスは、強くてお転婆でドジで優しくて勇気があって…がステレオタイプだけど、そんな明るい性格の子が挫折したり葛藤したりギャップがあるから映画として成り立ってたんだと思う。
アーシャはそのテンプレ近代プリンセスの上澄みだけで作ったようなキャラで、その上ストーリーのせいで利己的な性格の悪さまでプラスされてしまって、本当に史上最悪のヒロインだと思う。

「王道」と言えば聞こえはいいけど、女の子が歌って踊り、動物が喋り、悪は滅ぼされる、という「王道」を何の捻りもなくなぞっただけの映画は何も面白くはない。王道の中に常に新しさや発見を盛り込んでくれたからこそ過去作は面白かったわけで。

折角いい曲が多いのに、観賞後「あのキャラの曲をまた聴きたい」って気持ちが起きなかったのが一番寂しい。
スターは可愛かった。
竹