ご機嫌な黄色

アアルトのご機嫌な黄色のレビュー・感想・評価

アアルト(2020年製作の映画)
3.7
年順に仕事と時代背景を紹介してくれるローでハードな建築家ドキュメンタリー
建築家や建築史学者や友人、ラジオ出演時の本人の語りで辿ります
夫婦間の手紙も挿まれますが、
情感よりは総じて客観的なつくりに感じました
音楽だけは大仰でボリュームも大きく作り手の意図がみえ、好みではありませんでした

アアルト夫妻自体はとても映画的
アアルトとタイトルなのに、アイノの仕事面の偉大さにはあまり触れられずアルヴァの愛した人としてしか描かれていなかったのは不満です
一応「アアルトらしさはアイノによるもの」と言及はされるが、アルヴァに軸がある
絶対的に愛し合っているのに、夫のボヘミアンな自由奔放さに不機嫌にならざるを得ない彼女の心を思うと苦しくなりました

ドローンも使われている建築物の撮影は良く、
射し込む光や積もる雪、空気感が、温かみが、
‘人の生活の為の建築’、‘歓迎の意’等アルヴァの大切にしたことを雄弁に伝えてくれました
全景も手触りも、総合的芸術作品であることが撮されています
美術館の投影や本では得られない迫力があってスクリーンで見られて良かったです
実物も見に行きたいなあ😌

アルヴァの晩年の評判については知らなかったので特に勉強になりました
海外評価はされても、母国では老害のように思われていたとは
それでもまた現在、彼の建築物内で子ども達が穏やかな曲線の手すりをごく自然に撫でている
のを見ると、遺る仕事の本質を考えさせられます

フィンランド人は森を夢みる
ご機嫌な黄色

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