このレビューはネタバレを含みます
「超実写版」:前作でも思ったが、これは実写ではなくて、キャラも背景も全てリアルに見えるCGアニメだ。アニメっぽくデザインすればいくらでもアニメっぽくできる。その「リアルさ」と「アニメっぽさ」のバランスをどこに置くかだが、
本作では、メインキャラではない像やキリンは無表情だが、ライオンやプンバァ、ラフィキなどはリアルに寄せた造形で、笑顔や怒りなどの喜怒哀楽をハッキリと表情で見せる。これは本来気持ちの悪いもののはずだ。犬や猫だってここまで眉を上げて怪訝な顔など出来はしない。ここまでリアルなライオンが人間と同じような表情を作ってコミュニケーションを取ることを、不自然と思わずに子供たちが見ているとしたら、どうなんだろう? まあ、アニメだって同じじゃないかと言われればそれまでなんだし、歌って踊っちゃうミュージカルなんだから、そんなこと言ってもムダなんだが。
「前日譚として」:昨今のディズニーの実写版は名作アニメの前日譚とかスピンオフ的な作品が多い。『マレフィセント』なんかが代表格なんだが、ヴィランの過去を語ってヴィランなりの言い訳を付加しちゃうと、過去の名作で絶対悪だったヴィランとの整合性が取れなくなっちゃったりする。
本作でもタカ(スカー)は裏切りはすれど2度ムファサを助けている。これで『ライオン・キング』本編でもう一度裏切ってムファサを殺すかね? それならタカは殺すつもりで殺せなかったって終わり方にしておけば納得なんだけど、どうでしょう?
楽曲はリン=マニュエル・ミランダになり、馴染みやすいメロディで今風ではあるが、エルトン・ジョンほどの骨太さはない。
監督は『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスって、大抜擢だけど畑違いでびっくり! 確かにムファサとタカのほろ苦い青春物語になってることを思えば、バリー・ジェンキンスらしいとも言えるのか。
求められる水準には達しているとは思うが、特にこの前日譚が必要だったとも思えない。
それから、キャスト・スタッフ共に「『ライオン・キング』はもはや伝説だ」とか言ってるから、私も毎回思ってることをまた言うけど、伝説なのは『ジャングル大帝』です。いつの日かディズニーが手塚治虫に敬意を示す日が来ますように。