Yuto

西部戦線異状なしのYutoのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
4.1
Netflixオリジナル作品

1930年に公開されたアメリカの同名映画のリメイク作品(このタイトルの映画としては3作目。2作目は観てません)

第一次世界大戦。西部戦線で繰り広げられる独仏の塹壕戦と、停戦協定を結ぶ軍上層部を描く。


空気を切り裂く銃声と弾丸、
頭上に降り注ぐ砲弾、
地を揺らす戦車の轟音、
兵士たちの阿鼻叫喚、
爆発で穿たれた泥濘と血に染まった雨水、
撃ち、刺し、殴り、潰し、燃やし、……

恐怖と狂気に包まれた凄惨極まる塹壕戦

兵士になると決意したときの有り余るエネルギーは早々に枯渇。その分は魂を削って補うしかなかった


サブスクだけの配信でいいのかと思うほど巨大なスケールの戦争映画でした。

一貫した反戦のテーマと、オリジナルをオマージュしたシーンもいくつか見られますが、脚本は大幅に異なっています。基本的には別物と言ってもいいでしょう。なお本作はちゃんとドイツ語で話されます。

1作目を現代の技術で蘇らせた正統進化形とも言える映画です。戦闘シーンは言うに及ばす、人物の描写も丁寧であり、戦争映画として申し分ないと思います。
敵兵に重傷を負わせた主人公が、その苦悶する姿に動揺し介護を始めるシーンは分かっていても辛い……。

また、1作目には出てこなかった戦車を登場させたのはポイント高い。今でこそ陸上戦力の花形みたいな存在の兵器ですが、元はと言えば第一次大戦において塹壕を突破すべく開発された新兵器であり、この戦争の趨勢を象徴するかの如く独軍を蹴散らすシーンは非常に印象深かったです。

停戦協定のくだりはオリジナルにはありませんでしたが、ラストでそれが活きる脚本の構成でした。つくづく戦争っていいことがないなと痛感します。

2022年101本目
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