あさぎりたまり

西部戦線異状なしのあさぎりたまりのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
4.5
一青年の戦争経験談として語られていくストーリー。
戦争映画「1917」のドイツ軍側から見た映画、と言えば伝わる人もいるかもしれない。
20世紀に公開されたアメリカ映画を見たことがあったのでリメイクされたと聞いて鑑賞した。
これはリメイク映画はなくドイツが発表した20世紀における戦争の残酷さを描いた映画だと思う。
基本的に私は戦争映画は歴史を知る為の映画だと思い、鑑賞するようにしているがこの映画はあまりにも心が痛くなる。

当時のドイツ帝国の為、祖国の為に戦う事を求められた若者たちは教師の言葉に熱狂し、あくまで「志願兵として」戦場へ赴く。
しかしそこにあったのは、教師の言う華々しさとは違う、泥くさい第一次世界大戦の塹壕戦だった。
始まって数分後に行われる制服の支給シーンは心臓がギュッとなる。
マーク1が出てきた時の絶望感、仲間を失っていく悲しさ、敵を敵と思えなくなる瞬間。
気付いたら泣いていたというシーンが幾度も幾度もやってくる。
この映画はしっかり腰を据えて観ないと置いていかれるような気がした。
気持ちとしては置いていかれたいのに、現実は様々な感情を突きつけてくる。
感情のコントロールがとても難しい映画だった。

2022年11月現在、東ヨーロッパでは戦争が続いている。
第一次世界大戦から100年後の戦争はドローンが空を飛び、無人機から爆弾が投下され人が死んでいく。
敵を憎む、国を守る、その事はとても誇らしいし私も予備自衛官補として日本を守りたいと思う。
しかし、そこで無惨に死んでいく人たちの無念や
「この戦いでは1700万人が死んだ」の一言で済まされてしまう事が
とても悲しく思う。
戦争はない方が良い。それは間違いない。
「どうか公平な心でご一考頂きたい」
『どの口が言ってるんだ』
この言葉がとても心に深く突き刺さった。
どうかこれから生まれくる若者たちに
「明日が怖い」
なんて言わせない世界になってほしい