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西部戦線異状なしのCharlieZGのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
3.6
1928年出版、エーリヒ・マリア・レマルク著の反戦長編小説「Im Westen nichts Neues」の映画化。
1930年にアメリカで映画化され第3回アカデミー賞作品賞・監督賞に輝き、1979年にはアメリカでテレビ映画として製作されたので今回が初映画化ではないが、本国ドイツ製作という点に意義を感じる。そして最新の撮影編集技術でリアルに描かれた戦場の有り様が観ていて苦しくなった。

第一次世界大戦、高校生の志願兵パウルの目を通して戦争の理不尽さ悲惨さを訴えるドラマ。

クラスメート4人がまるでボーイスカウトにでも応募するかのように楽しげに軍に志願するが、後戻りも出来ず想像を遥かに超えた凄惨な戦場に生半可な志しは打ち砕かれる。

1人1人の人権も尊厳もない、ただ人海の小さな波となり散っていく、最早何のために戦っているのかという理由も分からず、ただ目の前の敵を殺すだけ。
そんな戦場でパウルが瀕死の敵兵に見せた微かな情が救い、彼にも家族がいて人生があることが分かり悲しかった。

前線は塹壕で膠着、僅か数百メートルの陣地を得るために300万人の命が犠牲になったのに軍上層部への報告は、

”西部戦線異状なし、報告すべき件なし”

兵士の遺体は地面に散らばった薬莢と同じなのか・・・あまりの矛盾に腹が立つ。
あれ?これって似たような事が勤務している会社でもありませんか?

戦争に限らず、人はとかく驕り高ぶる動物、自分が神にでもなったかのように勘違いする輩の何と多いことか。
現場の苦しみなどお構いなしにまるで将棋の駒を動かすように簡単に命令をくだす、行け!進め!モタモタするな!おまえのプライベートなどどうでもいい!目標達成に全力を上げろ!

国を司る政治家に然り、会社を切り盛る役員・管理職に然り・・・。


曇天の空から雪を被った森の続く向こうの明るい空が、いつか戦争のない世の中がやって来る、そのためには皆んなが変わらなきゃと言っているように見えた。
佳作、良かった。


監督 エドワード・ベルガー

キャスト
フェリックス・カメラー
アルブレヒト・シュッヘ
アーロン・ヒルマー
モリッツ・クラウス
エディン・ハサノヴィッチ
ティボール・ド・モンタレンベール
ダニエル・ブリュール
デーヴィト・シュトリーゾフ
アドリアン・グリューネヴァルト
アンドレアス・ドゥーラー
ヤコブ・シュミット
フリードリヒ・ベルガー
ミヒャエル・ヴィッテンボルン
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