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西部戦線異状なしのgeminidoorsのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
4.1
個人的には、久方ぶりに或る意味直球インコース高めみたいな戦争映画を観た気がする。
詳しくレビューされている方々の素晴らしい文字の連なりを前に、自分は何を書こうか考え立ち止まってしまう。
立ち止まれば、ある程度の時間寝かせて(湯船に浮かんで来るオナラの泡の様に)コトバが生まれてくるのを待つ時もある。待つ為に、今は何もしないかvsとりあえず浮かんだ景色みたいなものを、謂わばクロッキーするか、だったりする。
あらすじなんて観てみればいいだけだし、データ的なものは得意な方々が他に居られるし。
戦争映画は特にレビューしずらい…



本作を観て、幼い頃に触れ合った祖母を思い出した。明治生まれの、とても小柄で併し声は通る人だった。
彼女は東京大空襲の際、焼夷弾の影響で跳ね飛んできた何かの金属破片で片目を失明し、義眼を入れていた。
義眼は毎夜風呂の際に外されて、洗面所に在る祖母専用のアルマイト製の口すすぎ用コップに入っていた。ワタシは度々怖い物見たさにソレを覗いたものだ。

生前の彼女は幼いワタシに、事ある毎に話して聴かせた。如何に人は真っ当に生きなくてはならないかを。
道を外れると、如何に人は恐ろしく怖い生き物に成るか等々を、静かに話して聴かせたりした。
そして何より、戦争は怖しいー戦争は人を引き裂き、壊してしまうーそんな話を聴かされてワタシは育った。

この場で祖母の人生等、これ以上は書く筈はない。誰も期待してはいないだろう。
唯、彼女に可愛がられ彼女をよく知る自分も、時に戦争映画を観る。否、戦争映画も観る。くだらないヒーロー物も、どんどん人が殺られるドンぱち物も観る。
真面目に作ってある或る意味重厚な作品に逢うと、(チョイス時、そんな作品を期待して観始めた筈なのに…)結構息が苦しくなる。そのうち頭の中を風が吹く迄、時間がかかったりする。
でも又、そんな作品を探していたりする。 
本作は観て良かったし。



戦争は反対だ。
以前、音楽仲間に誘われてもデモ行進には一度も参加しなかったし、LOVE&PEACEの絵なんて頼まれても断った。描かないのか描けないのか…
右の頬をぶたれたら左の頬を差し出したりワタシは出来ないし、理不尽に刺されたら刺し返してしまうだろうし。
きっと、本来の自分はそういう人間だと自身で知っている。

唯、こんな映画を観れたり、こんな環境は"決して当たり前ではない"…色んな意味で、いつもその事は感じながら暮らしている。

たまには本作みたいなのもいい。
あのスカーフは今ワタシが持っているからー
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