いやー、傑作。やっぱすごいなスピルバーグ。物凄くパーソナルな、言ってしまえば壮大なホームビデオなのに、最後まで心掴まれた。いやー、面白かった。さすが巨匠。
今年は「エンドロールのつづき」「バビロン」「エンパイア・オブ・ライト」と映画の映画が続いてるけど、これは人間スピルバーグ形成物語であって、安易な映画賞賛映画ではない(上の3作は好きだけど)。映画は時に事実を伝え、事実を越え、人を救い、絶望させる。幼少期から映画と共に歩んできたスピルバーグの苦悩が、これでもかという程詰め込まれていて、ちょっとそこらのものとはレベルが違いすぎる。本人が撮ってくれて本当に良かった。
科学の父と芸術の母、裕福な家庭育ちで、自分とは何一つ共通項が無いのに、サミーが暗い顔をしてる度に寄り添ってあげたくなるのはなぜだろう。映画の魔法にトキメキを覚えた幼少期から、丁寧に抜かりなくカメラを回してるからだろうか。大好きな家族が壊れていく悲しさ、絶対悪がいない辛さを追体験して泣きそうになる。ミッツィが子供を巻き込んで竜巻に突っ込んでいくシーン、どんなに危険だと分かっていても近づきたいという衝動が、後にフェイブルマン家に起こる悲劇を暗示しているよう。そう考えると「すべての出来事には意味がある」という台詞が、なんとも皮肉というか。。後半のホームビデオのミッツィの複雑な表情が頭から離れない。芸術は心を引き裂くという大叔父さんの言葉通りになる呪い。すごすぎる。
以下ラストネタバレ↓
苦悩まみれな青年期だけど、大巨匠ジョン・フォードとの会話で希望を見出すシーンは最高だった。突然のデヴィット・リンチ(エンドロールで気づいた)だし、カメラクイッもめちゃくみゃお茶目。父と母の関係のようにTHE ENDのない、これから始まる彼の快進撃を、優しい気持ちで見守るラスト。
今後もずっとスピルバーグの新作を観続けたい。
