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フェイブルマンズのせっのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.5

映画大好きな少年が、自主映画や家族の様子を映すことで「撮ること」について学び、その嫌な面とも向き合って映画監督になるまでの前日譚。

今作も、最近公開の映画業界を描いた『バビロン』と同じように映画の悪い面をめちゃくちゃ描いてるけど、最後は結局映画って最高だなで終わる映画。

最初サミー少年は列車が車と衝突するシーンに心を奪われ映画が大好きになって、パパに貰った列車のおもちゃを映画と同じように衝突させたい欲望に駆られる。好きになったきっかけが映画って素晴らしい!ではなく、映画を見て殺し合いのシーンや爆発に以上に興奮してしまう欲求とさらにそれを撮りたいと思う加害性が最初から示されてる。

さらに、撮ることで誰かの人生を壊してしまうこともあるし、撮り方によって誰かを英雄に祭り上げることもできるしみすぼらしく見せることもできてしまう。結局自分が撮ったものに対してどう感じるかは見る人それぞれに委ねるしかない。ついでに女性を撮ることの加害性もしっかり描かれてる(車の前でママが踊ってるシーン)。

そしてパパが理系でママが芸術派だったこともあり、役に立つ化学や工学と役に立たない映画との対比も強調されてた。例えば、キャンプでパパがキャンプには大事な火起こしをしてるのに結局後ろで木に登って楽しそうにしてるママの方へみんな行ってしまうシーン。楽しいことは皆見てくれるし人も集まる、でも本当に大切なことに人は集まらない。

この両親の乖離から、スピルバーグは結構娯楽映画でお金を稼いでメッセージ性の強い小規模作を撮って、映画も役に立つような作品作りをしてるんかなと思った。まぁ娯楽映画でも役に立たないことはないんだけどね。

それにしてもどこまで実話か知らんが、当時家族のために映画を取れなかった少年が本作でやっと本当に家族のために映画を撮り、自分自身も間接的にではあるけど観客に見られる立場に初めて立つ、これだけでエモいやん。さらに、最後の地平線がクッと下がるの最高だし、フォード監督のシーンは瞬きできん。マッチの最後まで火を使って葉巻吸ってたの、やけにリアルであれ本当なんだろうなぁ。知らんけど。
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