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フェイブルマンズのはたのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.5
デビュー作の「激突!」やパニック映画の傑作「JAWS」、アカデミー賞作品賞の「シンドラーのリスト」など、スピルバーグの作る物語にはたいてい何らかの恐怖が挿入されていた。今作「フェイブルマンズ」は、「映画」についての恐怖を描いた物語である。

主人公サミー(スピルバーグの分身)は、映画作りに夢中になることを通じて、世の中に存在するありとあらゆる相反するものに気づいていく。父と母、化学と夢、仕事と趣味、現実と虚構、いじめっ子といじめられっ子・・・。サミーは、こうした相反する二つの世界から明確にどちらかの道を選ぶかを絶え間なく強いられる。撮影のテイストも、前半の暖色系の光に満ちたスピルバーグ初期の作品群を、後半は青白く、逆光により白飛びした「シンドラー・・・」以後のスピルバーグ作品を想起させるものになっている。

こうした中で、映画は、こうした黒か白かの世界から切り離されたグレーなものとして描かれる。ある時は物事に隠れた本質をあぶりだし、ある時は、臭い秘密に蓋をし、美しい面のみを抽出して見せる。都合よく、それぞれのいい面を利用できるため映画は恐ろしく描かれるのである。
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