はた

異人たちのはたのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.3
果てしない孤独の静けさに打ちのめされ、うなずかされた。

日本のノスタルジックな幽霊譚「異人たちとの夏」をリメイクした本作は、主人公をゲイの男性にするなどの様々な変更点を加えることで、過去の思い出に出会わざるを得なかった男の絶望、苦しみをストレートに描いている。

監督は「WEEK END」や「さざなみ」「荒野にて」のアンドリューヘイ。人間が元来抱える疎外感、焦燥感を穏やかな映像で綴ることに長けたイギリスの一流監督だ。今作は、ゲイ当事者である監督本人の思い出も混ぜた非常にパーソナルな作品らしいが、主人公アダムがセックスを拒む理由などに厳しい時代を過ごしてきた彼だからこそわかる強烈なリアリズムが存在した。

ブリットポップがふんだんに使用されているのも本作の魅力で、アダムとハリーがダンスクラブではしゃぐ際のドラッギーな演出は、監督の新たな演出の幅が広がったように見えた。物語の根幹をなす曲the power of loveのパワフルなメロディとあの演出は「私たちはみなよそ者=All of us strangers」だというメッセージを高らかに打ち出している。

ちなみに、この映画は人によっては立ち直れかねないほどの重さを抱えた作品なので精神状態が安静な時に鑑賞することをおすすめします。
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