はた

悪は存在しないのはたのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.4
棒読み演技や車の後ろからカメラを回すなど、トリッキーな演出が見てとれるが、実は「ファーゴ」や「スリービルボード」に似た物語だと感じた。

田舎町にグランピング施設を作るという騒動から、目先のことに頭がいっぱいな人間たちの愚かさや全てを見下ろす自然の荘厳さが相対的に浮かび上がってくる。人間描写は嫌というほど長くねちっこく描写されていて、100分くらいの短い時間なのに「うへぇ」とした気分にされる。説明会の煮え切らない進行や車内でのあけすけなさすぎる会話、枚挙にいとまがない。もはやコメディ。ラストの衝撃的な展開も、濱口監督の人間という生き物に対する無情な客観視の結果とすれば難なく受け入れられるだろう。

自分は映画の中でイタい人間を見るのが苦手なので、モヤモヤした気分のまま映画館を出たが、刺さる人には刺さる鮮烈な一本だったと思う。
はた

はた