ぽとむさん

愛国の告白—沈黙を破るPart2—のぽとむさんのレビュー・感想・評価

4.5
2022年12月鑑賞。

スラエルで兵役についた若者が、パレスチナを支配し占領する任務に疑問をいだき、自らの罪を自覚し、問いかけ、NPO「沈黙を破る」を設立する。別にpart1関係なく見れる。『暴力との対話』と並んで、全文書き起こしてくれョ!

後半は2014年のガザ侵攻での兵士の告白集が話題になったことで、イスラエル政府が「沈黙を破る」を狙い撃ちした特定のNGOの非合法化法案を通し、右翼メディアによる裏切り者呼ばわり、スパイを潜入させての盗聴を元に最大の放送局で30分の批判番組を放送などの攻撃から始まる。

唯一15年前の創設時から活動しているメンバー(本人も攻撃経験あり)に「なぜあなたは攻撃(批判)に耐えられるほど強いのか」と聞くと、「自分への攻撃なんて、パレスチナの人たちが日々さらされている物理的な砲撃に比べたら」だし、「何百万人の喉を踏みつけながら、普通の暮らしなんて」と。

「沈黙を破るの活動をしない選択肢など、自分にはない」と語るけど、この誠実な人材がこんなことに人生を擦り潰されなければならないのが辛い。攻撃が強まるにつれ、逆に第一次インティファーダ(1987)に従軍した偉い弁護士や退役将校からも支援の申し出が。あ、これはちなみに監督は日本人の映画。

冒頭、占領される前のヘブロンのマーケット。何万人のパレスチナ人の街に暮らす500人のユダヤ人入植者の護衛のために、街中にイスラエル国防軍が銃を構え、ビルの上から監視している光景が、「兵隊って生産性ねーよなー!」と印象的だった。無駄!

イスラエルの徴兵は18歳。証言者の家族歴がテロップで表示されるが、大抵は祖父母がホロコーストの被害者とか、亡命してきたシオニストの家庭。その価値観に疑いを抱かぬまま徴兵されて、パレスチナ占領の任務で葛藤を抱いたとしても、「国家イスラエルの共犯者」に仕立てあげられる。

自らの罪について口を開けば、「仲間」を傷つけたり、その人生を否定することになってしまう。口をつぐまざるを得ないから、ポーズとして「占領」行為を誇示して連帯することに積極的になってしまう。罪悪感を糊塗しながら、みんなで罪を共有せざるをえない。

2014年のガザ侵攻に参加した元兵士たち(ぼかしあり)が、闇雲にガザを爆撃し、目についただけのパレスチナ人を狙撃したさまを「パレスチナ人に対してイスラエル兵が万能であることを示すためだった」と証言するけど、むしろ「罪」で「仲間」と連帯したかったからではないかな、と。

りゃあもう、自我はめちゃくちゃになってしまうだろうに。そんな経験を18歳以上の「イスラエル人」が全て(なのかな?徴兵率ってどんなもん?)共有してしまっている。何十年も続いているから、年代に関係なく、全世代が。そのために殺され続けるパレスチナ人。今ココにある地獄絵図。

「沈黙を破る」の活動は、彼らが「人間」であるためにせざるをえないことなんだろうと思う。だからこそ、古い世代の人々も支援しようとしている。でも、今も国家によって18歳のこどもの人格が兵器としての罪を背負わされ続けていて、止めることはできない。

イスラエル映画をここ最近何本か見てたけど、私はイスラエルについて全然わかっていなかった(これ1本でわかった気にもなれんが)……。イスラエル人として生まれてしまうだけで殺戮と占領に直結して、原罪化してしまっている。『クレッシェンド』も生ぬるい。

てか、『クレッシェンド』の若者たちは兵役前の子が多かったのかな?今後イスラエル映画を見るときは18歳以上か以下かを意識して見てしまう。イスラエル兵役映画といえば、『運命は踊る』もすごく良かったけど、あれこそもう一度見返したいなあ。