ぽとむさん

殿、利息でござる!のぽとむさんのレビュー・感想・評価

殿、利息でござる!(2016年製作の映画)
4.4
コメディタッチの泣ける時代劇(チャンバラなし、ラブシーンなし)ですごく面白かったよ!実話ベースということだけど、どの程度盛ってるのか、同じ原作者の『武士の家計簿』は見てなくて、でも、あの「鯛の絵」は「膾(ナマス)」の読み違いの可能性が濃厚、というツッコミには興味があるんだが( http://d.hatena.ne.jp/rekisinojyubako/touch/20110112 こうして歴史に謎のレジェンドが作り上げられるのか!!)、今回はマジで羽生結弦の起用が飛び道具すぎて、びっくり仰天だったわ!ただの話題づくりや人気取りではなく、羽生結弦でなければならなかった、羽生結弦だから意味が変わってしまった映画だと思う。

同じ宮城県の狩野英孝(ラーメンつけ麺、ぼくイケメン)でなくて良かった、という呟きを見かけて、いやいや、狩野英孝でも案外イケるのでは?と本気で私は思って(割と好き)、頭の中でシミュレーションしたら、羽生結弦がやるのとは、きっと随分違う印象だよな、いや、全然違うものになる、これはどういうことなのか、と考えたとき、羽生結弦のキャスティングの罠に気づいたのでした。

本当は皆を苦しめる財政難の原因(結構ひどい理由。まさにただの「伊達」)たる馬鹿殿様なのに、まるで価値観が違う殿上人に見える不思議。役者的な演技ではないのと、完璧な姿勢と佇まいがそうさせるのか、なるほど、他の人がやってたら嫌な馬鹿殿にしかならないだろうなあ。こりゃ人の圧だけで、なんだかいい話風に騙されるなあ、と、羽生結弦を使う理由と必然性、キャスティングの力すごい!と思いました。

他のキャスティングも、普段、阿部サダヲも松田龍平もあまり好きではないのだけど、その(私が苦手とする)特徴を最大限に活かしていて、とにかく誰もがハマりすぎるはまり役でした。
ラストの山崎努に一番泣いた。
瑛太が、最初はサダヲの言動に引き気味だったのに、村の人々も、正義のものすごい同調圧力にのまれていく様が恐ろしかった。

そして、それも食ってしまう羽生結弦。こわいわー。
(30年後の人は、この羽生結弦を、この殿様をどう見るんだろうね?とても興味があります)

なかなかキャスティングでこれだけ楽しませる映画もそうないと思います。おかしかった!