コマミー

その道の向こうにのコマミーのレビュー・感想・評価

その道の向こうに(2022年製作の映画)
4.8
【その傷を癒やし合う】



"リンジー"は駐屯地のアフガニスタンで"脳の外傷"と同時に"心にも傷"を負ってしまう。

だが、その心の傷は故郷"ニューオリンズ"にいる時からあり、その地に順応しようと彼女はもがいていた。

やがて彼女はプールの清掃員となり、彼女なりに元の生活を取り戻そうと動いていた時に、移動手段であるオンボロトラックを直しに"自動車整備工場"に立ち寄る。

そこで出会ったのは、"足に障害を持つ"整備士の男"ジェームズ"だった。

次第にリンジーはジェームズと交流するようになって、そして"惹かれ合う"。

そして次第に、"お互いのトラウマ"について語り合う…。


"Apple"そして"A24"、そして"リラ"監督、そしてプロデューサー兼本作の主演を務めた"ジェニファー・ローレンス"…こんな素晴らしい"癒し"を与えてくれてありがとう。
と言うのも、今の時代に必要なのは、この作品に描かれている事かもしれないのだ。
過去にトラウマを持つ、つまりハラスメントやいじめ、虐待や大きな事故、そして大切な家族の死など、いろいろある中で、大切なのは"心のケア"だからだ。1人で抱え込むと、どんどん自分の心は暗闇に落ちていって、中には抜け出せず、二次被害を引き起こすかもしれない。
相談する相手も誰でも良いわけではなく、なるべくならば"同じ経験や同じ程度のトラウマ"を持つ人同士でありたい。この作品では、たまたま出会った2人が、"出来る限り近い距離感"で親身に話を聞き合ったり、物を奢ったり、少し羽目を外したりして、そして過去と向き合う姿が、とても"温かくて"次第に涙が出た。

刑務所に入っているリンジーの"兄"との手話での会話も、温かさも感じ、そしてやるせなさも覚えた。これは兄なりの本音でもあり、少しでも大好きな妹を安心させる為のエピソードだったのだなと感じた。リンジーな兄への信頼感もちゃんと伝わる。なんて繊細な優しさが溢れるシーンなのだろうか。

ジェームズと彼が住む"家の広さ"についても、彼なりに闘っているのを感じたし、同時にこの空間で"1人"、後悔と悲しみと闘ってきたのだなと感じた。

A24の作品の中で間違いなく私の中では1番心に刺さった作品だった。
何でもかんでもくつけたいわけではないが、"話を聞き合う事によって前進しようとする"点では、コゴナダ監督の「コロンバス」に通じるものを感じた。「コロンバス」でも人生が止まってしまった2人の主人公の前進までの道のりを描いている。「その道の向こうに」では、「心のケア」をテーマに同じ事を描いていた。

素晴らしいケア映画でした。

また観ようかなと思いました。
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