(記録として)
銀河鉄道の作者、かの宮沢賢治の生い立ちを描いた作品です。
その独特の世界観や不動の人気で誰もが賢治を朧気ながらも理解していると思っているのではないでしょうか。しかしこれを見る限り、賢治は少し社会や人への適応に難しさを抱える青年ではなかったかとさえ思われます。
しかしそんな賢治を「父」が、実家の豊かさもあり自由に生きさせてくれたお陰もあり、かの偉大な作品群が残せた側面はあるのでしょう。とはいえその独特の世界観を確立するまでの家の内外での様々な経験や、家族との死別などを潜り抜け、賢治はことを成せたのです。賢治の枯れたような後半生の姿は、なぜか若い菅田将暉が上手く演じ切っていました。また改めて父役・役所広司の演技力を感じました。
ほぼ満席の映画館でしたが、咽ぶような声も聞こえていました。しかし最後にひとつだけ、エンドロール時のいきなりの的外れな歌は勘弁してください。それまでの感涙するような、日本的なしっとりした賢治の世界が台無しでした。