ベビーパウダー山崎

aftersun/アフターサンのベビーパウダー山崎のネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

ビデオカメラを通しての父との思い出。空港でのラストふくめてドワイヨンの『家族生活』とよく似すぎている。アメリカ人はドワイヨンなんて誰も見ていないだろうし、パクリ元としては最適。『家族生活』が父(ドワイヨン)からの歪な関係性で本作は娘視点からの映画。あと、ドゥニとかアケルマンあたりは当然勉強している感じ。
イキった美大生の卒業制作なら及第点。点滅で映画を混乱させるとか、カメラがぐるりと回って現在と過去がシームレスにつながるとか、一昔前に散々見たような気もするが、一周していまフレッシュに捉えられていそうで怖い。作り手が00年代前後のダサさを再現しているのか、それとも無邪気に真顔で撮っているのかはよく分からない。きらきらとした映像表現としての「プール内の水中カメラ」もモチロンある。そろそろ俺が映画でのプール禁止令を発令しておく。
同性愛も表現者として生きる道も、この旅での記憶がいまの自分を作り上げた的な、お前のことなんか知らねーよという図々しいナルシシズムだが、それを内に入らずマスターベーションせず、誰もがこういうノスタルジーありますよね?A24ブランドと美化された異国の風景と共に一緒に浸りませんか?という洒落た作りで間口を広げているのがまんまと成功しているし、おそらくこの後に躁鬱で自殺した父親の不穏さを映画に散りばめているのも辛めのスパイスとしてよく効いている。
「過去」を責めることをなければ嘆くこともない、ただその人生を受け入れていて、その白と黒をふわふわと漂わせている感じがとても現代的で、こういった作品は今の時代「共感」できる(から評価されやすい)。俺は父親だと言い張るロリコンに誘拐された幼女が、大人になってもそのトラウマに悩まされ、キチガイ病院で過去のビデオカメラ映像を延々と再生し続けるヴェルナー・シュレーターみたいな映画だと勝手に思って見ていたけど全然違った。