たまご

aftersun/アフターサンのたまごのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

11歳の娘と31歳の父のビデオカメラに残るトルコリゾート地での夏の記録。ブラーなど挿入曲1990年代。
娘にとっては楽しい夏休暇、父も同じように楽しんでいると無邪気に思っているが、どうやらそうでもない。
娘を愛する父親と、父親が好きな娘のゆったりとした時間、ずっと続けばいいと思うことほど、終わりはくる、この時間は戻ってはこないけれど愛があった記憶は消えない。監督の自伝的映画。

同じ時間を過ごす父と娘の気持ちの乖離を、対照的にみせる。
父と同じ歳に、30歳の誕生日を迎えた娘がビデオを見返す描写。女性の恋人もいる、赤ちゃんの泣き声から子供もいる、表情は暗くうなされる。

早く大人になりたい11歳のソフィ、大人になってしまった自分に絶望するカラム。娘に楽しい休暇を与えたいだけなのに、うつのブラックホールに沈む。「30歳まで生きられたことに驚いている、40歳まで生きられるとは思えない」、夜中海に向かって歩くカラム。
父の誕生日を無邪気で可愛らしい方法で祝うソフィ、苦しそうに1人部屋で泣くカラム。
カラオケ大会でソフィが入れたカラムが好きだという曲をカラムはすごく嫌がって歌わない。カラムにとってセクシュアリティ・同性愛に関する曲だったのか。
娘がいいと言った高価な絨毯を諦めた表情の描写のあと、購入する。
水中ゴーグルをなくした時の、カラムの伝わらないようにする落ち込み方、それを感じて高かったでしょごめんと肩に頭を乗せるソフィのやりとり。

海の上ボートで2人、昨晩同年代の子とキスをしたとソフィ話すと、男の子とのことやドラッグのこと、なんでも話していいんだよ。とカラムはいう。この言葉が好き。

最後の日、「Under Pressure」をソフィとカラムは踊り強く抱き合う。(あの字幕の歌詞がほしい)2人が交わることはもうないと分かっていても、ずっとこのゆっくりとした2人の夏の時間が続いたらいのにということばかり。

11歳の娘としてのソフィは父の人間的な部分までは知ることはできない、父と同じ大人になってからビデオを見返す。
空港でソフィを愛していると送りだしたあと、カラムは一人ストロボの焚かれた扉の奥に姿を消す。

余白が多く明示されない。
自分にも幼いときには理解できなかった、当時の父母の言葉や悩む姿があったことを思い出す、歳をとるごとに思い出すんだろうと思う。

「遊び時間に空を見上げて太陽が見えたらパパも太陽を見てると思える、同じ場所にいないし離ればなれだけど、そばにいるのと同じ」
たまご

たまご