イトウモ

aftersun/アフターサンのイトウモのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.7
中盤にあるテレビのくだり。あれを見れただけでも見てよかった、と思える。

娘のほうが、ビデオカメラを振り回して声が聞こえ、画面右側のテレビに撮影した映像が、左側の鏡に父娘2人のやりとりがそれぞれうつる。父がカメラを止めさせるとテレビの真っ暗な画面に今度は2人が別の角度で反射し、両方鏡になる。

母元で暮らす娘が父と暮らす束の間のバカンスには、他の親子、他の子ども、他のカップルという、自分たちの鏡になるような「他の」組み合わせが散りばめられる、と同時に父ではなく、母は? 今ではなく、過去は? 撮られる側ではなく撮る側は? 休みではなく普段は? と劇の仕掛けはいつもその裏を意識させる。

死と近親相姦の香りがしつつ抑制が効いている。ちょっと臭すぎるけれどほどほど不埒でよかった