このレビューはネタバレを含みます
開始3分で、あ、これ好きなやつってわかった。
映像の中で被写体が反射やフォーカスで映し出され、目線が画面いっぱい動きまわるけど、忙しなさはなくこの世界観を存分に楽しめた。
とにかく映像がセンスよく、すべてを瞳に留めておきたいほど。
最初見た時は、父親ご心の病気で亡くなってしまったことには気付けたけど、その理由まではわからずモヤモヤな気持ちもありつつ、ラストでは思いっきり泣いてしまった。
まっさらな状態で見て、ありとあらゆる考察見るタイプなので、余韻にどっぷり浸かりながら考察見たらさらに好きになってしまった。
まず、父親が鬱になったのはセクシュアリティが関係していることが想像できるシーンが多い。
幼い娘を男だらけの水球に誘うシーン。スキューバダイビングのスタッフ(男)に話しかけるシーン。唐突な青年たちのキスシーン。そしてビデオを通して懐古する娘のパートナーが女性であること。
関係性が整理された時に思い起こされたのは同じ境遇のタレントの方。
一度は抜け出せると思っていた自分のセクシュアリティからなかなか抜け出せず、そんな自分も隠しきれずに、婚姻関係を解消し、でもパートナーとして愛し続けることを誓う。パートナーや子供との関係性は良好なのに、「外野」からの視線や言葉に悩まされ、自分のストーリーに終止符を打ってしまう。
正直に言うと当事者ではないので、それがどんな気持ちだったのかも理解できない部分が大きいし、こうして想像するのも当事者や本人とっては不躾なことかもしれないけど、一つひとつのシーンを振り返るたびに苦しさを感じられたのが、この映画の凄さだと思う。
日焼け止めを塗るほどトルコの眩しい夏と、常にうっすらと漂う不安定さが、絶妙なバランスで存在しているのもそうした心の病気の状態を表しているようだった。
まだまだ言いたいことが多いけど、それはまた時間が経ってもう一度観た時にとっておこう。