アフターサンとは「日焼け後」の意味。
予告編は娘と父の感動ドラマのように謳われていたが、個人的にはビデオテープと記憶から父の内面を検証するサイコミステリーのように感じた。
行間を読むタイプの作品で、一回見ただけでは完全に把握できずもう一回観直したらより楽しめた。
性的マイノリティーへの差別意識が今よりもずっと強かった20年前。当時の父の自己嫌悪を、大人になり同様の性的指向に至った娘ソフィーが回想し想像し自らの糧にする物語と解釈した。自閉のダンスホールに埋没して踊る父を反面教師として、娘は精神的社会的な自立へと向かう。
ジャック・ロジェ監督のバカンス映画と同様に潮の香りが伝わってきた。自分は海で遊ぶような青春時代を送っていないので、より本作のほうが子供時代のノスタルジーを感じた。
監督のインタビューによると
➀:11歳の時に撮ったビデオカメラ映像
②:当時のソフィーの記憶
③:➀と②の間を埋める31歳ソフィーの想像力
という3つの視点から構成しているとのこと。
父が独りで泣いている姿もソフィーの想像ということか。