ももいろりんご

ファイブ・デビルズのももいろりんごのレビュー・感想・評価

ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)
3.5
ファイブ・デビルズはお話の舞台、フランスの山あいにある町の名前(架空)。原題「Les cinq diables」5人の悪魔という意味は同じ。96分と短めなのにジャンル分けしにくい濃厚凝縮、それでいてストっと胸に落ちた。ちょっと変わってる話でした。
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 =STORY= *公式HPより
嗅覚に不思議な力をもつ少女はこっそり母の香りを集めている。そんな彼女の前に突然、謎の叔母が現れたことをきっかけに彼女のさらなる香りの能力が目覚め、自分が生まれる前の、母と叔母の封じられた記憶にタイムリープしていく。
やがてそれは、家族の運命を変える予期せぬ結末へと向かっていく…。
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フランスの田舎町で両親と暮らすヴィッキーはお母さんのジョアンヌが大好き。お母さんの手伝いをして、お母さんの匂いをコレクションするほど。でもお母さんはどこか覚めた目でヴィッキーをみていて、娘が学校で嫌がらせをされてることにも気づいてないし、嗅覚の能力についても引き気味。その親子の気持ちの差になんだか嫌な予感の序盤。
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妹・ジュリアがやって来たところから、話がググーっと展開。お父さんとお母さん、おじいちゃんや町の人までもが不穏な雰囲気になるのはなぜ?その謎をタイムリープするヴィッキーが垣間見ることになる。
子どもからすれば、両親の自分への愛情も、両親の間にある愛情も信じたい。けれど今の家族の生活は、過去の深い傷痕の上にできたものであり、自分の存在も影響していることを知る。「自分が生まれなかったかもしれない」これは少女にとって恐怖だ。
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匂いとタイムリープ。「時をかける少女(原作)」が浮かんでしまった。古いね。
かつては元気に笑っていたのに今は常に物憂げな母。叶わなかった夢と恋。失った友情。古い考えが蔓延る田舎町。それらがジョアンヌを、そしてヴィッキーを孤独にしていったのだと思う。
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あれもこれもそれも、ネタバレせずには語れないので中途半端な感想になっちゃいますが、オカルトやスリラーのオドロオドロ要素は少ないです。同性愛や人種差別への偏見といった問題と、親子、母娘の不思議な繋がりを描いた作品。ラストの仕掛けにも驚き‼️本当に不思議なお話。