松田

「ウルトラセブン」55周年記念 4K特別上映の松田のレビュー・感想・評価

3.7
深い…!
映画館でウルトラセブンの勇姿が観れるって最高じゃん…と何も考えず観に行ったが、色々考えさせられた。
正直言うと戦闘シーンとか物足りなさを感じる事もあるかもしれないが、特撮というよりもSFとして観に行けるエピソードが選ばれていた。
これは厳密に言うと映画ではないんだけどこういう体験が出来るのも映画館のいいところ!

・宇宙囚人303号…
凶悪な侵略者、キュラソ星人以外にも悪ではない宇宙人の存在を感じさせてくれる。
キュラソ星人が割と怖くて奇怪でサスペンスチックながらも、まだ見ぬ宇宙との繋がりを感じる勧善懲悪だった。

・超兵器R1号…
「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」の名言を生んだ言わずと知れた名エピソード。
超兵器R1号とは言うものの、存在も中身も核兵器そのもので、侵略者からの防衛手段と抑止力として武力を持たなければ…これも核抑止論。
現代では世界各国が保有する核の傘の下で非常に不安定な情勢が続いているし、その均衡を破りそうな事が起き続けている。
冷戦による核軍拡は終わったが、まだ血を吐きながらマラソンを続けているようなもの。
失血死はきっと遠くない。何がゴールなのか。いつになれば、何をすれば、マラソンをやめることが出来るのか…
そういうことを考えさせられる深いエピソードだった。

・盗まれたウルトラ・アイ…
今では特撮でたまに見かける変身不能回。
ただの特撮お約束回で終わらない。
侵略者の狡猾さとその計画は地球人以外にも牙を剥いた。
その後の放送が続いてるから分かる通り、ウルトラセブンが地球を守ってくれて終わるのだが…
地球は守られたから安心だ、と安堵して終われない悲しみに包まれる。

・史上最大の侵略…
前後編に分かれた最終回。
地球での活動が限界に近付いていたモロボシダンの身体の異常とゴース星人の地球侵略計画がバッティング。
ゴース星人の侵略の規模の大きさは、タイトルが伊達じゃない程の大立ち回り。
最後の最後まで地球の為に自らの身の危険を顧みないウルトラセブンに心打たれる。

どのエピソードも"地球人ではない第三者"であるモロボシダンの視点が我々地球人に考えさせてくれる事が多いと思う。
地球以外にも世界が存在していることを知っている考え方と言うべきなのか、普通に生活してるだけでは地球人だけでは気付けない事ばかり教えてくれた。
きっとこれは彼がウルトラセブンとして地球を守ってくれた事と同等に重要な事だった。
松田

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