ふじじ

マンティコア 怪物のふじじのレビュー・感想・評価

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
3.8
リアルなやり取りと熱い瞳に寄り添う観客の心を叩き落とす気持ち悪さに唖然。「健全」からの全てが辛辣。Filmarks試写会にて鑑賞。

スペイン映画らしい自然光の色合いに包まれ、予告やあらすじで公表されているシーンは割と序盤から映されます。
あまりに自然でリアルなボーイミーツガールがジワジワと進むなか観客視点からは「おやおや?」が続く居心地の悪さ。
この男女の細かいやり取りが本当にリアルで驚きます。

題材である本当に不快だけどまだ害がない「怪物」の悩ましさ。これを滲ませる主演の瞳の演技が素晴らしい。主人公は言葉数が少ないので、主演サンチェスの瞳で強く表現される欲情と喜怒哀楽が実に良かったです。

映画全体を通して些細な登場人物のあらゆる台詞が伏線かつ社会への問いかけになっていて、主人公の理解者として寄り添いつつある観客としては「健全」な側からの台詞が全て辛く刺さります。

「怪物」と化した主人公の気持ち悪さは圧巻。フリアンが豹変したわけではないのに、急に受け入れがたい存在になる感情経験をさせられるのは監督の手腕ですね。ラストの長回しは唖然とさせられました。

本作品は劇場中のお腹の音が聞こえるぐらい静寂のシーンが多かったので、気になる方はお腹を満たしてくることをおすすめします。
ふじじ

ふじじ