不乱苦

梟ーフクロウーの不乱苦のレビュー・感想・評価

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
5.0
「全感覚麻痺」とか「圧倒的没入感」とか、ちょっと映画の実態を離れた大袈裟な宣伝文句が使われていたが、全部忘れて一切先入観なしで観るのが正解。事実、そんなことを忘れて観たが、絵作り、カメラワーク、演技、ストーリー、ユーモア、スリル、サスペンス、どれもがセンス抜群。「主人公は盲目の天才鍼師だが暗闇では見える」という、ありそうでなかった設定がタイトルの意味らしいが、この設定が実に巧みに活かされている。よくある「オープニングが後半の重要なシーンから始まる」パターンの映画だが、本編中でそのシーンにたどり着いた時、「そういうことか」とネガポジ反転するような気持ちよさがある。あらゆる伏線が実に効果的で、どれもが劇中の緊張と緩和を見事に生み出していて、自分が映画に心を弄ばれていることに快楽を覚える。「目を逸らした方が生きやすいかもしれないが、それでも目を逸らしてはいけない」というクリシェが通奏低音になっているか、それすらサスペンスの素材として使い切ってしまう。しっぽまであんこ映画でした。
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