イスケ

猿の惑星/キングダムのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

記憶が確かならば、シーザー三部作でコバが悪役として描かれた際、本来は保守的で安定した性格を持つボノボを邪悪に描いてることに対して、ボノボに関連する組織からクレームを入れられていた気がするんだけど……プロキシマス・シーザーもボノボよな?w
また怒られるんじゃないかと心配になっちゃう。

それにしてもウェス・ボール監督は、シーザー三部作のことをとても深く理解して作られているのがありありと伝わってきて素晴らしかった。
ドクター・ストレンジMoMの監督を務め、「過去のMCU作品は見ていない」と言い放ったサム・ライミ監督には、ウェス監督の爪の垢を煎じてお飲みいただきたいものですよ。

シーザーというカリスマなくして面白い作品に仕上がるものかしらと、あまり期待値を高く持てなかったんですが、全くの杞憂でした。


これまでのシリーズの中でも最も人間が怖く見えた後半だったなぁ。
メイの本性が露見していく様子はもちろんのこと、人間たちが「令和!?」と思ってしまうようなファッションで文明を保ちながら生きていたことにゾワゾワした。

そう言えば、メイだってボロボロに汚れていたからすっかり見逃していたけど、普通に現代人の格好だったよね。原始人ルックではなく。
だから、途中で出会った野生の人間たちとはそもそも違ったということだし、あんなところに留まるわけにはいかなかったんだと、後になって理解できた。
仲間たちに出会えた喜びを感じていたのではなくて、野生には用無しだったのだと思うとなんかこえーよー。


ただ、このシリーズの常として、どちらか一方が悪いのではなくそれぞれに真っ当な理由があるんですよね。
コバ、ドレイファス、大佐、プロキシマス……やり方や残忍さは看過できないものも多く存在するし、悪い野心や顕示欲が混じってもいるわけだけど、行動原理の核には相手から与えられた苦痛や恐怖がある。
メイもそれは同じなんだろうと思えるシーンがいくつかありました。

特にそれを強く感じたのは、人間が立場を奪還することを既に諦めているトレヴェイサンに「君は何者?」と聞かれ、「猿に仕えない人間」という言い方をわざわざして見せたところです。これって間違いなく憎しみがこもってますよね。
プロキシマスとの決戦を終えたノアの元に訪れた際にも、「人間のために作られたものは猿のものではない」ということを敢えて言うんですよ。

現段階では想像でしかないですが、メイの両親が亡くなった話が本当なのであれば、エイプに殺されたんじゃないのかと想像しました。
だからなんとしてもエイプに力を与えたくないのだと。

出会って間もない夜に、電気の棒を修理したノアをじっとメイが見つめているシーンがあり、警戒してるんだろうなとは感じていましたが、メイがエイプに力を与えたくないという観点から見れば完全に合致しますから。

ノアが高度な頭脳を持つことを知り、プロキシマスを打倒したことでカリスマ性も身につけた。メイとしては、彼に対する情は感じつつも警戒心はMAXになった。彼が力を持ち結束が強まればエイプはさらに強くなる。
だから拳銃を持って殺しに来たんでしょう。

でもそこでノアはシーザーの窓の形をしたネックレスを渡して、戦う気持ちがないことを表明するわけです。
メイも心が揺らぎ、あの場では拳銃をぶっ放すことができなかったのだと思います。

本当のシーザーの後継者は、当然ながらプロキシマスではない。
ラストのノアの振る舞いに、人間との共存を目指したシーザーの姿が重なりました。

このユニバースは、スターウォーズEP7-9とは一味違うぞw
イスケ

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