さよこ

あしたの少女のさよこのレビュー・感想・評価

あしたの少女(2022年製作の映画)
3.9
【目黒シネマでブラック企業の2本立て🦉】
ペ・ドゥナ目当てで鑑賞。後半からの登場だった。

🍲全体の感想
自分も主人公と似た仕事をしていたことがあるので通話時間の管理とか、抜き打ちでモニタリングされる感じとか、目標ギチギチに追わされる感じは既視感しかなかった。特にコールセンターは1日中社内にいて、閉ざされた空間だから余計に治外法権になりやすいんだよね…。

🍲主人公の家庭事情
日本の住宅が小さい造り(特に都内…)だからかもしれないけど、主人公の両親はそこまでお金に困窮しているようには見えなかった。家は綺麗だし、主人公には一部屋与えられてる。なので『進学するにはお金が足りないけど、子どもが働かなくても今すぐ生活が破綻するほどでもない』くらいの、ごくありふれた家庭でも起こりうるケースを示していると思った。これが貧困だったり、家庭に大きな問題を抱えていたら、テーマがブレちゃうだろうし、絶妙な層を狙ってきてるなと思った。

🍲若者たちの変化
勝ち気な性格の主人公や学生時代を謳歌していた同級生たちが、ブラック企業で働くことになって、どんどん死んだ目になっていくのが観ていてつらかった。高校時代の『おれたち最強👍』な万能感は、学校周辺でしか通用せず、社会の洗礼を受けるにしてもいきなりハードな現場で辛かったろうな…と思った。インターンってもう少し徐々に慣らしたりするもんじゃないの…?いきなり大人と同じレベルを求められたらパンクしちゃうよね。少し前に海外のTikTokerが「9時~17時の労働は酷すぎる。自分の時間がとれなくて頭おかしくなりそう」と泣きながら訴えた動画が話題になっていた。その是非はさておき、8時間労働をベースとしない取り組みをしている会社も出てきているので、もう5年、10年くらいしたら少しだけ社会が変わってるかもしれない。変わってるといいな。

🍲メンタルケア
感情の起伏が激しくなったり、感情が虚無になるのはメンタル相当ヤバい証拠なんだけど、主人公はもともとの性格が『初対面の失礼な男性』にも食ってかかるくらい喧嘩っ早いし、平常時⇔発症時の違いが周りからは見えづらかったんじゃないかな。職場では『最初は良い子だったけど次第に本性出した』くらいに思われてそうだし。普段の自分を知っていて、変化に気づいてくれて、さらに適切なアドバイスをしてくれる人ってなかなか稀有な存在だと思うので、メンタル壊した人の治療が長期化するのもなんか分かる気がする。

🍲どこから変えるか?
あの女性が言っていたように、地方庁には何の権限もなくて、根っこから解決するには国の制度から改革するしかないんだよね…仕事をするうえで指標となるKPIの設計は不可欠だし、そのKPIを無視して独自に動いても予算は減らされちゃうわけで。KPIにしても何か代替案があれば良いんだけどね。だんだん刑事が私情も相まって暴走気味だったのが少し残念だった。

🍲その他
・徴兵制度がある国で、喧嘩売るの強すぎる
・コールセンターの垂れ幕も和訳してほしいな
・試供口紅を!直接!口に!!!
・お鍋に!直箸…!!!
・どこの国も搾取される層は似通ってる。
・母親も働いてるのかな?夫婦で自営業ぽいけど。
・父親が勝手に解剖決めたのはびっくりした。母親の意思も尊重して欲しいな…
・主人公の『お酒に酔っただけ』を真に受けるの愚かすぎない?もっと心配してあげて…😿
・仕事中に遊びの約束LINEきたら、余計に仕事ツライ気持ちが溜まっちゃうよね。親友に理解されないのも地味に凹むし。
・なんやかんやで問題は解決する糸口もなく終わってしまって、社会問題ではなく、故人へのセンチメンタルな感情で締めくくった感が否めず、ラストとしてはあまりスッキリしなかった。もう少し社会派ぽいラストにしても良かったな。
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