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ナイン・マンスのzhenli13のレビュー・感想・評価

ナイン・マンス(1976年製作の映画)
4.0
『マリとユリ』よりこちらの方が先に制作されていて、モノリ・リリとヤン・ノヴィツキが同じ役名のユリとヤーノシュで夫婦役となるが、別人として描かれている。こちらのヤーノシュの方があからさまにクズ男となっている。メーサーロシュ・マールタ作品を今回初めて観た。直球で臆面もなくモラハラ発言をする男性や男性を擁護する人々をがっつり提示しており、しかも現代においてその鮮度が落ちてないという…
色々腹立ちながら観てたが脱獄モノみたいだなとも思った。家父長制脱獄映画。ほんとの脱獄モノと違うのは、女性は罪を犯していないこと。強引な男にほだされて一緒になることは罪ではないはずなのに。
そして女性にはサバイブしていくための経済的自立が絶対必要なのだと改めて。
ユリを匿い、ヤーノシュの訪問を拒絶するユリの母と祖母の強い視線に、家族というよりも女性の連帯を感じた。

出産が近づくと、音はアフレコでユリの吐息やいきむ声だけになる。実際にモノリ・リリ本人が出産するシーンを撮影していて、いきむ彼女はジャンプカットとなる。しかしちょっと驚いたのが、赤ちゃんが会陰から出てくるときにぼかしが入ってたこと。え!何で?と。映倫的に当然なのかもしれないが、ぼかし入ってる方がすごくおかしな不自然なことのように思えた。出産シーンあるのもスタン・ブラッケージの映画も知ってたので、余計にヘンに感じたのかも。

妻帯者の教授とのあいだに子どもがあり、モラハラクズ男との子どもを産んだあとも、魅力的なユリはまたどこかの男性といい感じになるのだろう。そしてまた面倒なことになり、そのたびに女性ゆえに罵倒されたり傷つけられたりするんだろうか。それをサバイブしていかなければいけないんだろうか。

いつも思うんだけど女性に対する悪口ってどうして「ふしだら」とか「淫売」とかなんだろう。あとちょっと反発したら「きちがい」ね。バリエーション少なすぎて想像力が貧困。
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