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ナイン・マンスのろのネタバレレビュー・内容・結末

ナイン・マンス(1976年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

同じ日に見た『アダプション』と同じく顔をはじめとした身体のアップが多く、その分生々しさがあるのはいいんだけど、似たようなショットがここまで多いとなんだかなぁ。本当に男がダメで気分が悪くなるけれど、『アダプション』よりはダメな側にも寄っている、というか単に描く時間が長い。でもまぁだめ。主演の彼女の表情(東欧っぽい、と勝手に思っている、他者を突き放すようなポーカーフェイス、ダメ人間を好きになってしまった不安で落ち込んでいるような表情、子供と向き合うときの穏やかな顔つき。いつのまに変わるから役者の年齢が読みとれない)が素晴らしく、対して男の浮かれた笑顔と戸惑いの無表情の繰り返しにはイラっとする。逃げの姿勢から生まれる無表情と無言は現実でもフィクションでもいちばん苦手な場面かも。。
最近身近に出産や妊娠の話を聞くことが多く偶々ではあるけど最後のシーンは個人的にはちょうど、のタイミングでみることになった。いつも出産すごいすごい言うことしかできなけどエピソードを聞いて心底そう思っていて、みんなもともと胎児だったことを考えると目を逸らしてはいけない場面だとも思う。極私的〜とかドキュメンタリーで出産シーンを見たことがあったけど、劇映画としてみせてるものに挿入する映画って他にあるのかな。
何より家父長制の抑圧に屈しない女性を描く女性監督の作品ということで今再発見されることに意味もあるんだと思う。映画自体は正直言ってそんなに好みではなかったけど70年代の東欧のフェミニズムを知りたくもなったしみてよかった。

追記:思い返すと、人間のの肌を超近距離で映すことで身体らしさを奪う、って言うのは面白かったな。
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