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ミッキーマウス ザ・ストーリーのRenのレビュー・感想・評価

3.5
「ミッキーマウス」の名前を知っている人であれば観て損無し。既出のエピソードが多い気はしましたが、90分でミッキーマウス中心史観を総ざらいできる良ドキュメンタリー。

ウォルト・ディズニーの "It was all started by a Mouse." を皮切りにミッキーマウスの誕生から現在までを駆け抜ける。自社制作ドキュメントだけれど、キャラクターへのリスペクトを忘れない一方で決して歴史賛美に走らず意外とフラットな視点で語られていたと思った。時代の写し鏡としての、そしてウォルトの分身としての存在には光もあれば陰もあることを照射する。ディズニーがなぜここまで著作権に厳しいのかの理由も分かる。

ミッキーの性格的な設定やキャラクターデザインの変遷の話は面白いので何回でも擦ってほしい。戦前のミッキーには品行方正さが求められて彼の物語に制限があった一方で戦後のミッキーは好き放題やった、という話が興味深かった。逆な印象があったので。自分の中で初期ミッキーには『プレーン・クレイジー/飛行機狂』でミニーにキスを迫り『ギャロッピン・ガウチョ』で葉巻を吸い『蒸気船ウィリー』で猫をぶん回すやんちゃなイメージが強かったから。

語り落とせないのが、愛国心の強いウォルトがディズニーブランドを戦争のプロパガンダに使用した点や、作中で人種差別的な現代ではアウトな描写を取り入れていた歴史もある事実。世界恐慌から戦時中からディズニーランド誕生まで、ミッキーマウスに魅了された人々をあらゆる観点から映し出しており、ドキュメンタリーとして芯が通っている。
ただ内部の人たちこそこのような歴史に自覚的であることが知られた一方で、『南部の唄』騒動に代表されるキャンセルカルチャーが存在することへの疑念はあまり晴れなかったのも事実ですが。

同時並行で進む1分間の短編『Mickey in a Minute』の制作、そしてその本編をラストに持ってくる構成も良い。このドキュメンタリーそのものを象徴していた。

以下、推したいミッキーマウス映画
○『ミッキーの消防夫』
○『ミッキーの摩天楼狂笑曲』
○『ミッキーの日曜日』
○『ミッキーのアイス・スケート』
○『ミッキーのクリスマスキャロル』
○『ミッキー、ドナルド、グーフィーの三銃士』
○『ミッキーのミニー救出大作戦』
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