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クリード 過去の逆襲のMCATMのレビュー・感想・評価

クリード 過去の逆襲(2023年製作の映画)
2.0
俺たちロッキーファンは、ロッキー4とかどうしようもないやつも全部飲み込んで「ロッキー最高」って叫ぶアンドロイドなわけだから、全然OKよ。OKだけど、人間だった頃の理性を取り戻して一本の映画として見ると、わりとしょうもないことになっていた印象。俺の2つ星はすべてジョナサン・メイジャーズにあげてください。

虐待を受けていた保護者に対して暴力をふるったクリードをかばうように拳銃を持ち出して逮捕され、18年間を刑務所で過ごした幼馴染のデイム(ジョナサン・メイジャーズ)が、チャンプとして引退したクリードの前に現れる(ちなみに、ここまでの甘ったるい空気を、唐突にピリピリと切り裂いた演出は見事だった)。それだけを持ち出すと、一人逃げ出したクリードをデイムが「腰抜け」と呼ぶのもあながち的外れでもないので、ここからその印象を弱めるか、弱いが故の戦い方を強調していかなければなかなか主人公に共感しづらくなるのだが、この後に出てくるエピソードの数々もことごとくクリードに対する悪印象を上塗りしていくことになる。

自分の弱さを突きつけられる過去に対して向き合うことを避けてきたクリードが、手段を選ばないデイムが「すべてを奪う(そう言ってるんだからそうなんでしょう)」のを阻止するために、何をすべきなのか。テッサ・トンプソン演じる妻のビアンカの「諦め」に関するエピソードと、娘アマラの「暴力」にまつわるエピソードを背景に、どのような答えを導き出すのか。明らかに「2」の同シチュエーションを下敷きにしたであろうその答えがビアンカの口から発せられた時、「2」では号泣したあのシーンが、今作では「?なんで?」と疑問符で頭が割れたかと思った。

結局、「デイム vs クリード」というボクシングの試合の煽りVを見せられているかのよう。嫌な奴 vs 腰抜け、なので、「ロッキー〜クリードファン」というのが乗っている自分でも割と結果どうでも良い感じで、そうでない人が見たらどうなってしまうのか。デイムのやり方には横暴な(犯罪の可能性もあって、それはそれで問題)ものはあったが、外から見ている分には単なる反則スレスレのダーティーファイターであり、むしろすごく強い分ダークヒーローとして一定以上の人気があってもおかしくないと思うのだが、最後の試合に至ってもそこは平熱のまま。

まあ、もうアドニス自体に語るべき物語は残っておらず、ロッキーサーガの次の展開は、あの人に委ねられるのだろう、と、納得していたら、なんですか最後の短編は。良い意味でも悪い意味でもすっごくびっくりしちゃったので、今後の展開に一抹の不安を感じながら映画館を後にすることになってしまいました。
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