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ふたりだけのロデオのMCATMのレビュー・感想・評価

ふたりだけのロデオ(2022年製作の映画)
4.0
あらすじとか概要だと、父娘がトラックレースに向かうロードムービーであることぐらいしか分からないんだけど、実際は序盤から雲行き怪しい。離婚して親権を元妻に取られた父親セルジュが、空手教室終わりの9歳の娘リリーをトラックに乗せて、そのまま伝説のトラックレース大会に向かうので、もう正真正銘の誘拐。セルジュが義理の父親を暴行したりする姿を見ているリリーだが、基本的にはトラックも父親のことも好きなので、なんとなく不穏な空気を感じながらもそれなりに楽しい道中。しかし、その姿を運転席から見つめるセルジュは、どんなにはしゃいでいても心なしか涙目。パトカーのサイレン鳴り続ける中、この旅が続けば続くだけ、父と娘の別れは近づいていくのだ、ということを父親も、リリーも、それぞれのやり方で認識していく。『レスラー』のような落伍者の話で、実際父親はやること成すことほとんど大間違いなのだが、娘への眼差しだけは真摯すぎてやっぱり俺は嫌いになれず、覚悟を決めた後の展開には泣けるものがあった。絵面は地味だが、展開も豊かで、ラストカットまでバッチリと決まった傑作。
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