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哀れなるものたちのMCATMのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
堂々たる出来。徹底的にアンチ・ピグマリオン的映画。征服欲独占欲の高まりを、暴力的な束縛で叶えようとする男たちに対する抵抗の記録であり、欲望を曝け出すことで、男たちは意志ある世界からの敗走を余儀なくされてしまう。そういう背景を勘案した時に、「哀れなるものたち」とは、男性に捕縛された女たちなのか、それとも欲望に抗えなかった男たちなのなのか。

綴りこそ違えど名前から透けてみえる『Baxter, Vella Baxter』のマルグリット・デュラスは、主人公の地獄巡りを説明する補助線の一つとなる、と言っても過言ではないと思う。もう一人は『フランケンシュタインの怪物』を産み落としたメアリ・シェリー。こうした名前の一つ一つに、この世界のテーマが開放的に示されている(その分、ランティモス自身の態度、というものから、芸術における性差発露の作法みたいなものも考えさせられてしまったけど)。

映画としての魅力もたっぷりで、俳優陣の素晴らしさ(エマ・ストーンはもちろんだが、マーク・ラファロにも改めて感心した。あんなダンスで魅せられる人だったとは)や、美術や衣装の美しさ、改めて言うまでもないはず。特に、Jerskin Fendrixによる劇伴とエンドロールは、マスターピースとして記憶されるべきものだったと思った。
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