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オットーという男のteaのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
4.4
《人生で最も大事なことは生きていることであり、生きるのに大事なことは愛(大きな心)である》

“愛が一番大事”
生きていて何度この言葉を聞いただろう。
でも、本当にそうだなと。人を想うことが1番大事だなと、想う人がいる・想ってくれる人がいることが何よりの幸せなんだと改めて感じさせてくれた映画でした。

ルールに厳しく、無愛想な男、オットー。名前の発音にも厳しい。オッローでもオトーでもなく、O T T Oで“オットー”だ。予告やあらすじでは、町内一の嫌われ者・・・。果たしてそうだろうか?最初から私にはそうは思えなかった。
ルールに厳しいのだって「なんでこんなのも守れないバカたちなんだ」って口では言いつつも、人を心から蔑んでいる訳ではなく「なんとかしてやりたい」の裏返しだった。それが隠しきれていない所もとても愛おしい。物理的にも精神的にも、心の大きい人なのだ。

でも、どうしてひねくれてしまったのか。
それを回想シーンとともに紐解いていくのだが、その中のオットーとソーニャがすばらしく良い。。☺️(私は全ての回想シーンで嗚咽をこらえていた。。😭)



(以下、ネタバレ含みます!)



出会いの場面、落とした本を届けに逆に走る電車に乗るオットー。(このシチュエーションの時点で目に涙が、、。)逆の電車に乗ったから追加の電車賃を払わなければならなくなり、ソーニャから借りた小銭。使わなかった(たしか) 1942年製造の銀の25セント硬貨。ラッキーな幸せの硬貨よ。そうか、オットーが外に出る度肌身離さなかった硬貨はここでもらったものか、、(涙)

お金を貸してくれたお礼の夕食の場面。嘘をつき通すことを辞めたオットーの誠実さに惹かれるソーニャ。

卒業式の後、車の中でプロポーズするオットー。嬉しくてクラクションを鳴らすソーニャ。。

そしてナイアガラの滝を観た帰りの事故。ソーニャの部屋にあった車椅子は伏線だったのね。。赤ちゃんは流れてしまったけど、作ったゆりかごはマリソルの新しい息子に受け継がれる。これも生きていたからこそ、繋がった想い。
「いいパパになるわ」
そう言ったソーニャの言葉を想起させる、オットーが子どもを抱く姿。ゆりかごにそうっと大切に置く腕。

死のうとするオットーの前に幾度となく現れたソーニャは、オットーに生きていてもらいたがった。
まるでマリソル家族がもたらす幸せを予期しているみたいに。
でも実際には、幸せなことがあるなんて保証はどこにもない。しかし生きていないと幸せなことは絶対に訪れない。
「あなたが悲しさを抱いてるのも、怒っているのも知ってる。でも1番大事なことは“生きている”という事実よ」

「ソーニャが自分のモノクロの世界をカラフルにしてくれた」とオットーは言った。「ソーニャが世界の全てだった」とも。
そのオットーのまっすぐで大きな愛に涙せずにはいられなかったけど、さらに感動するのは死のうとするオットーに
「私がいない世界にも、素敵なことはあるわ」と、「最後まで楽しんできて」と言うように、この世に繋ぎ止めたソーニャの存在。きっとこの2人は同じお墓で眠り、天国でも笑顔で過ごしているに違いない。

生きていれば、出会いもあり別れもある。
この世の終わりと思った別れもあるし、もはや終わればと思った挫折だってある。でもそれは、生きてるからこそだし、それこそ生きている証明な気もするし、人生をちゃんとフルコースで味わってるように思う。
せっかく生まれてきたんだったら、味気ないものを分かち合うより、幸せを分かちあいたいですね!
大好きな映画に出会えました!

2023年 18作目
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