はなたまご

オットーという男のはなたまごのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
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 「残された者はどう再出発し、誰のために生きるのか」という問いにシンプルだが理想的な答えを出す作品。
 気難しい男が周りの人々との関わりによって変わっていく、というストーリー自体はあまり目新しくないと思う。あえて注目するとしたら、出てくる登場人物の背景が移民だったり、トランスジェンダーだったりと現代を投影した形になっている点であろう(もしくはトム・ハンクスの息子がオットーの青年時代を演じている点か)。ただ、それは大して重要な点ではない。周りの人々を気にかけ、日々小さな善を重ねていくこと。悲しいときは人を頼ること。人は死しても何かを残すこと。そういう根本的な人としての生き方をそっと思い出させてくれることこそがこの映画の素晴らしいところだと感じる。
 下手をすると隣人の顔さえ知らないような希薄な近所づきあいも当たり前の現代において、「きっと誰かが自分を気にかけてくれている」という幸せな寂しさを感じるにはどうすれば良いのか。そんなことを考えた作品だった。