パトリス・ルコント監督が描く、重厚でクラシカルな雰囲気が漂うヒューマン・ミステリー。
世界的人気キャラクター、メグレ警視をジェラール・ドパルデューが好演。1950年代パリの下町を濃密に再現する雰囲気描写が圧巻だった。
身元不明の若い女性の刺殺体が発見される。ほぼ手掛かりがない中で、メグレ警視の捜査により徐々に事件の真相に迫っていく。そして被害者の人物像が浮かび上がっていく…
ジェラール・ドパルデューの抑えた演技、もはやいぶし銀に達した演技に安心感と説得力、いや風格すら。
そもそも身長180センチ、体重100キロという原作に忠実な姿と存在感が素晴らしい。若い頃のギラギラした色気がすっかり取れて、個人的にはめちゃくちゃ好印象。
なんてことないセリフや仕草もめゃくちゃチャーミングだった。
そして、決して仕事を機械的にこなさない、人間味溢れる捜査ぶりにじんわり。同時に浮かび上がる警視自身の背景にもじんわり。
更には、画面に溢れる光と影のコントラストも素晴らしく、サスペンスとしての見応えより、世界観とジェラール・ドパルデューを堪能する作品じゃないかな。
いずれにしても、パトリス監督はねっとりしすぎないタイプの作品の方が個人的には好み。