恥ずかしながらシモーヌヴェイユについて、何も知らないまま鑑賞しました。
女性として、ユダヤ人として、被弾圧者として絶望に追いやられて分断を経験した彼女が、高潔に人のつながりを信じて人を尊重するところ、希望を持って臨めるところに心が震えます。
劇中の「人は苦しんでいる人を見るのが苦しい」「収容者を恥のように見ている」ということはその通りだ、と思いましたし、だからこそ彼女が苦しんでいる人に対して「傷ついても良い」と言いながら苦しみを眼差すのがすごいと思います。
「怒りがある」というシーンの迫力、刑務所や収容所の描写、断髪などの人格を踏み躙るような描写の壮絶さは思わず目を背けたくなりますが、これがまさに「苦しんでいる人を見る苦しさ」なのかと思います。
ノーブレスオブリージュを感じました。
自分も苦しいものを見ないようにするのではなく、苦しいものとして近づいていくことを目指したいなと思いました。
彼女のような意見が、「楽観主義」などとして分断されない世界を切に祈ります。
最後に、夫の変化が大きかったにも関わらず描写が少なかったことが、2人の歴史や愛の偉大さをかえって感じさせました。
良い映画でした、苦しい時にまた見たい。