Jun潤

それでも私は生きていくのJun潤のレビュー・感想・評価

それでも私は生きていく(2022年製作の映画)
3.4
2023.05.17

予告を見て気になった作品。
仕事、子育て、介護に追われるシングルマザーが、新しい恋に落ちる、なんともフランス味たっぷりな雰囲気。
製作国は他にイギリス、ドイツと、もうチケット買っただけでオシャレな気分になりますね。

老いと病から日常生活もままならなくなってしまった父・ゲオルグの面倒を見ながら、小学生の娘を一人で育て、通訳としての仕事もこなしているサンドラ。
ある日サンドラは亡き夫の友人・クレマンと再会する。
病状が悪化したため施設を転々とする父の世話、多感な時期を迎えつつある娘の面倒を見ながら、サンドラは妻子を持つクレマンとの恋愛に溺れていく。

これは邦題が悪いよ〜!
解釈によっては本編と真逆の意味に捉えられかねないじゃないか。
どうして大人しくゲオルグの自伝の日本語訳にしてくれなかったのか。

と、まあ原因の半分くらいはちゃんと原題や英題を調べなかった僕にあるのですが、邦題に引っ張られてサンドラにハッピーエンドは無いという先入観と、序盤の祖母のセリフにあった哀れみについてのこととクレマンのサンドラに対する愛情のリンク予想などで、なんだかんだ終始集中して観ていました。
しっかり観ると今作はサンドラの物語というよりもサンドラとクレマン、母・フランソワの3人の家族、親子の物語だったかなと思います。

生き甲斐でもあった本を読むことができなくなるほどの病に対し、文字が書けるうちに自分のことを残そうとするゲオルグの意志、ゲオルグの元教え子たちに受け継がれる彼が集めた書籍の数々、逃れることのできない「死」に対して最後まで抗おうとする姿。
20年前にゲオルグとは離婚したにも関わらず、現在は別のパートナーと子供たちとの生活があるにも関わらず、ゲオルグの介護を手伝うフランソワの強かな女性としての姿。
そしてその二人の間に生まれ、仕事も育児も恋も、何も捨てることなく、不倫という破滅する可能性の方があるクレマンとの関係でさえも幸せを掴もうと、最後まで強かに抗うサンドラの姿が描かれていました。

演技についてはゲオルグを演じたパスカル・グレゴリーですかね。
序盤から弱々しい姿が痛いほどに伝わってきましたが、ストーリーの進行に伴いどんどん弱っていく。
言動だけでなくその立ち居振る舞いだけでそのことを表現する姿に圧倒されました。

邦題に引っ張られ過ぎて本来の見方ができなかったこともありますが、ゲオルグが病気や死に対して抗っている姿をもう少し見たかったこと、どうしてもクレマンの妻子のことが気になってしまうこと、あとは個人的におそらくハッピーエンドよりもビターエンドの方が好きなこともあって、平均値ちょい下ぐらいの面白さだったかな個人的に。
Jun潤

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