芋

ヒューマン・ポジションの芋のレビュー・感想・評価

ヒューマン・ポジション(2022年製作の映画)
4.0
ポストカードにしたくなる北欧の清潔でかわいらしい街並みにうっとりしつつ、所々映される退廃的な建造物にはっとさせられる。いくらノルウェーの制度が他国に比べて優れていたとしても、完璧に包括的といえるわけではないことを淡々と突き付けていて、インターセクショナリティの視点でノルウェー社会を捉えているのが良かった。
同性カップルの平穏な日常は、国や時代が違えば簡単に壊されてしまうものだし、昔よりは生きやすくなったとしても社会から疎外されている感覚や孤独感はずっと近くにいるんだと思う。
この前プライドパレードに行った時、レインボーフラッグがあちこちにはためく様子や、広い視野を持ったMCのやさしいトーク、キャッキャしているゲイのおじさん集団を見てうれしくなったと同時に、この会場から一歩外に出れば虹色の旗なんかほとんど見ないし、本屋にいけばトランスヘイト本が当たり前のように平積みされていて、キャッキャしてたおじさんたちも日常に戻ればスンッてなっちゃうのかな…って想像したらどんどんしんどくなって、むしろ後ろ向きになってしまったことを思い出した。最近、クィアにはハッピーないし社会的でいることをいろんなところから要求されているような感じがずっとあって、それに乗りきれなくても一応道化みたいになったり、逆に賢人みたいな態度になったりしちゃうけど、それに抗ってもモヤモヤを抱えててもいいし、だらだらボーッと過ごしててもいいんだよ、って言ってくれてるような気がした。ラストショットがとにかく良い、クィアの生存をしっかり刻印してくれてありがとう。今の私に必要な映画だった。
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