「処女受胎」

冒頭、野趣の中に女流画家の姿を捉える。孤独で不幸な私、吊橋のロングショット、個展、記者、束縛、嫉妬、 産婦人科教授。今、秘密を知った男と処女のまま子供を産みたい女の誕生が描かれる…本作は黒岩重吾の同名小説を高岩肇が脚色し、島耕二が監督した若尾文子主演の一九六六年の映画で、この度長らくソフト化されていなかったものが、角川書店から発売されDVDにて初鑑賞したが面白い。

人工授精と言うテーマを大胆に取り上げた衝撃の異色作として発表当時大きな話題を呼んだようだが、若尾が女流画家を演じていてほぼシーンごとに変わる衣装が見てるこちらからすると非常に面白い。

さて、物語は三十歳で独身の高野愛子。美貌と才能に恵まれた彼女は、優雅で幻想的な画風で、ユニークなベールに包まれている。個展も盛況で、パリ近代美術展の金賞受賞が伝えられ、記者らに押し寄せられる存在に。愛子の絵を見ていた産婦人科教授の矢田部は"この絵には孤独の影がある"と呟いた。その言葉に愛子は本心を見破られたと感じる。ある日、愛子は学生時代の友人で既に結婚している三枝に会い、その幸せな日常を見て自分も子供を生もうと決心するが、結婚による束縛を嫌った愛子は人工授精という方法を用いることにする…。


いゃ〜、風俗ものが好きなの方と若尾文子のファンだったら不満足には陥らないと思う。とにもかくにも彼女が美しい。特に着物姿の彼女は本当に絵になる。複雑な現代風俗の微妙な女の性に託して描くセックスミステリーとしてはかなり良いが、いちど見たら充分だ。巨万の富を受け継いですべてを手に入れた女を見事に若尾文子は演じていた。

強烈なタイトルで若尾文子主演、ソフトも安価で手に入り易い。
それなのにレビューが全然無い謎の映画だったが、ようやく鑑賞。
こりゃ珍品だわ。

芸術家としての感性を取り戻すべく、人工授精を決意する若尾文子(この時点で狂ってる)。
若尾文子を密かに思いながら、他の男の精子を使ったと知り「上書き」しようとする伊藤孝雄。頭がオカシイ。
珍しく中原早苗が大映映画に出てるが、ここでも恋の鞘当てで吹いた。

医者を演じるのは若山弦蔵。
声優として認識してたので、役者として演じるのを見るのは初めて。
最初「藤岡琢也ってこんな美声だっけ？」と思ってしまった。

画家の若尾は、結婚という束縛を嫌うが、子供は欲しい。人工授精について考える。そして計画は実行に移されるが、精子提供者という問題が起きる。66年製作。当時はセンセーショナルなテーマだったと思われる。