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クリスマス・ツリーのtakのレビュー・感想・評価

クリスマス・ツリー(1968年製作の映画)
3.6
個人的プロジェクト「名作映画ダイジェスト250」(ロードショー誌80年12月号付録)制覇計画のためセレクト。

少年と父親が海で遊んでいるところに突然起きた飛行機事故。核兵器を積んでいたことから少年が被爆、白血病で余命半年と診断された。父親は残された日々を一緒に過ごすために、自分の静養だと言って田舎のシャトーで暮らし始める。

日本では昔からこうした難病ものがウケる。古くは吉永小百合の「愛と死を見つめて」。テレビでも「赤い疑惑」の白血病、昼ドラ「わが子よ」の骨肉腫、「神様、もう少しだけ」のHIVと挙げたらきりがない。イタリア映画の難病もの秀作「ラストコンサート」も日本資本で製作されているし。

本作は王道の難病もの映画だが、病気の子供が苦しむ姿はほぼ出てこず、せいぜい悪寒を感じて横になる程度。心境が深く描かれるのは周りの大人たちで、少年は病気を知ってからも「まぁ楽しくやろうよ」と言う。それは強がりなんだろうが、大人たちに陰も見せずに接する。映画前半は金持ちボンボンらしくわがままを言い放題で、大人たちがそこまで叶えてやらんでもと思える。しかし、映画後半、父親のベッドにもぐり込むあたりで、直接表現されない少年の気持ちが、観ているこっちにジワジワとしみてくる。

心情を吐露するのが大人だけという潔い演出は、子役に過剰に演技の負担をかけず、一方で観客に子供の心情を想像させて感情をかき立てる。監督は「007」シリーズで知られるテレンス・ヤング。台詞に頼らないラストシーンは狼の遠吠えだけが悲しく響く。変に回想シーンを挟んでお涙頂戴にしない。ただ抱きかかえて部屋を出るだけ。余韻が残るラストシーンはお見事。

狼を飼いたいと言い出す息子のために、動物園に忍び込むのはいかがなものかと思うが、その後の狼と少年の姿を見るとちょっと救われる。映画「禁じられた遊び」で有名な楽曲「愛のロマンス」が美しく使われている。
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