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ロング・エンゲージメントのtakのレビュー・感想・評価

ロング・エンゲージメント(2004年製作の映画)
3.4
 ジャン・ピエール・ジュネ監督がずっと暖めていたという題材である本作。婚約者の生存を固く信じ続ける主人公を、オドレイ・トトゥが演じているので、「アメリ」のあのファンタジックな世界を期待した人もいるだろう。しかし本作は、戦争の醜さ・無意味さとそれに翻弄される人々の姿を見事に描ききったよりハードな映画である。でもそこに描かれる人間関係は他のどんな映画よりも温かい。

 ジュネ監督ゆかりの俳優たちの個性あるキャラクターは、ここでも健在。特にオドレイ・トトゥ演ずるマチルドは「アメリ」同様コミカルで変わっていてチャーミング。「夕食前に犬が入ってきたら彼は生きている」などと”おまじない”をかけるのは、同じような経験ないですか?ここでは信じ続ける強さをも演じていて実に素晴らしい。脇役で登場するジョディ・フォスターも、戦争に運命を狂わされながらも懸命に生きる女を演じていて印象的だ。信じて追うよりも関係者を殺す道を選んだマリオン・コティヤール扮する女性が、獄中で涙する場面も好きだ。砂利を蹴散らす郵便配達まで愛すべきキャラばかり。この辺りは「アメリ」を彷彿とされるところだ。戦場で何が起ったのかをめぐるミステリーが物語の主軸となっている。服装も同じで泥まみれの男たちを延々追い続ける観客はちょっと混乱することだろう。僕も途中でわからなくなったけれど、そこはそれで流して観るのがよいだろう。わからないなりに、マチルドと一緒に新事実にドギマギする方が映画としては楽しめるはず。要するに結末にきっと感動するはずだから。
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