チブ夫

ゴジラ-1.0のチブ夫のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.0
官学の曲者たちが連携しゴジラに立ち向かったシン・ゴジラに対し、戦後間もない国力で、しかもほぼ民間の力だけでゴジラに挑む本作。ゴジラは原水爆、及び戦争のメタファーであるから、このタイミングで登場するゴジラは人類に対する怒りに満ち溢れており、上陸と共に鳴り響くテーマも厳かに絶望感を煽る。そんなゴジラと、ゴジラに対する手立てがほとんどない民間組織という構図。54年の初代作ですら、芹沢博士により作り出された非現実的な対生物最強兵器オキシジェン・デストロイヤーがあったからこそゴジラを抹殺できた。
絶望的な状況で立ち上がる者に剣を授けたのは、山崎監督が紡ぐ人間ドラマそのものだった。今回の駿河湾におけるワダツミ作戦は、かつての芹沢博士の東京湾における決死の作戦とは着地点が大きく異なる。戦争のやり直しというと語弊を呼ぶ部分もありそうだけれど、まさにその通りな、最終決戦の過程とそれに至るまでの人間模様。この時代設定を最大限に活かした攻防は想像以上に見ごたえがあったし、はじめて体感したIMAXの「無音」も素晴らしかった。
昭和、平成ときて、ついに令和1体目の国内産ゴジラが登場するに至った。これまで様々な角度から製作し続けられてきたのに、まだアプローチする余地があるのもすごい。シン・ゴジラからマイナスワンへの一気の時代転換も良い方向に利いていた印象だし、今後ゴジラ映画の指揮を執る人には相当なプレッシャーがかかりそう。それでも作り続けてほしい。



追記:ラストシーン(ゴジラ側)に関して。
「あのゴジラが最後の一匹だとは思えない。」という台詞で終わる初代ゴジラや、vsデストロイアにおける4代目から5代目への継承が印象的な平成ゴジラ等を踏まえると、個人的にはあのタイプの画で幕を閉じてほしくはなかった。人間側のラストシーンの方にもアレが重ねて描かれているのだとすると、もしかしたら気味の悪い終わり方なのかもしれない。
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