チブ夫

ソーシャル・ネットワークのチブ夫のレビュー・感想・評価

ソーシャル・ネットワーク(2010年製作の映画)
4.5
作業がまったく捗らない夜に観たくなって、累計7,8回目になるかな。元々はこのテンポ感が好きで、作業のやる気も出るしで、そんな感じで観ていたんだけど、どんどん主人公に感情移入してしまって、結果的にフィンチャーの手のひらの上で転がされている。成功者の「変化」に焦点を当てた物語は数あれど、この作品は主人公が「変わらない」ことこそが本質、というのが持論であり、そこが好きなところである。

例えばアシュトンカッチャー主演の「スティーブ・ジョブズ」なんかは経営者の変化や栄枯盛衰が軸に描かれているが、比べて本作はザッカーバーグの非道的な面はそれほど強調されていない。オープニングを観ればわかるように、ただただコミュニケーションに難がある大学生なのである(ブログに元カノの悪口を書いてしまう点が非難の的になるが、いわゆるネット弁慶だっただけなので許されたい)。そしてラストシーンまで、それは変わらないのである。

ウィンクルヴォス兄弟との訴訟沙汰は、理系ゆえの理詰めで物事を進めたことに起因するもので、(事実、システム根本を盗用したという兄弟の主張については持論を展開し否定したものの)ザッカーバーグは最終的に和解を受け入れており、一連の描写は決してネガティヴキャンペーンではない。
もう一方の、共同創業者エドゥアルドによる訴訟(恐らくフィクション)は、唯一の友人との決別というまったく質の異なるものであり、極めて悲哀に富んでいる。互いの方向性がズレようとしていた時にも主人公はエドゥアルドを傍らに置こうとしたが、増えすぎた歯車の動きは彼一人では止められない。意図しない形で友人を失ってしまっても、その心を伝えることができない。公聴会での主人公の立ち振る舞いは、前者の訴訟沙汰におけるそれと同じようでいてまったく見え方が違う。

エンディングで、エドゥアルドとの和解金だけが非公開だったことの意味。直前のラストシーンも好きだけど、いつの間にかそっちの方が心に残るようになってしまった。

追伸:
この作品は脚色込みで好きなだけで、ザッカーバーグ本人のファンではないし、Facebook (Meta) も使っていません。
チブ夫

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